2度の休止を乗り越えた「サガミオリジナル001」 相模ゴム工業が販売再開後に目指すビジョンは?(3/3 ページ)
約1年間の休止期間を経て、6月に販売を再開した「サガミオリジナル001(ゼロゼロワン)」。「001」はいかにして生まれたのか。そして再開から2カ月、どういった状況にあるのか――担当者に話を聞いた。
日本コンドーム工業会で記録されている業界全体のコンドーム出荷量は、ベビーブームのときは400万グロス(1グロス144個)。そこから右肩下がりになっていって、2012年には250万グロスとなる。少子高齢化、セックスレス……業界には大逆風が吹いていた。
しかし13年、260万グロスに回復。14年には270万グロスと、引き続き回復傾向にある。復調の原因として考えられるのは、「001」を筆頭とする薄物コンドームだ。
「この増加は、コンドームを付けたがらない人、使わない人を『0.01ミリメートルだったら』と引きずり込めたことにある」
その分、望まない妊娠や性病リスクに苦しむ人も減ったと考えれば、「コンドーム会社に社会的責任がある」という山下さんの言葉も分かるのではないだろうか。設備を増強し、「002」「001」合わせて以前の1.5倍になったタイミングで販売を再開。現在はこれまで仕入れていた店舗を中心に納品し、数量を制限して対応しつつ、販路の規模を休止以前に戻している段階だ。
「インバウンドの爆買いは永遠に続かない。それに踊らされて設備を急激に増設はしない。取引のある店舗や、買ってくれる消費者を大切に展開し、生産に次ぐ生産で品薄状態を解消していくので、温かい目で見守ってほしい」
1年間の空白があったが、初動としては好調の滑り出し。「待っていたよ!」「002を使っていた」「002でも意外と悪くないかも……」といったさまざまな声が聞こえてくるそうだ。ドラッグストアからは「リピート率が高い」「ニーズがある」との報告を受けるという。
「再開して2カ月なので、まだ反応をとらえきってはいない。休止前のデータとも比べながら、長い目で反応や売り上げを見ていきたい」
相模ゴム工業の“次の一手”
今は“サガミオリジナルブランド”の立て直しに全力を出している相模ゴム工業。現在の品薄状態が落ち着いた時、“次の一手”は何を考えているのだろうか。
「『001』が『002』のニーズを“食ってしまう”のではなく、“普段使いの002”“特別な日の001”のように、共生するブランド作りをしていきたい。サガミオリジナルブランドを大きくしていければと考えている」
相模ゴム工業は売り上げの7割がヘルスケ事業。残り3割をプラスチック事業や介護事業などが占める。「3割部分を伸ばしつつ、新規事業を立ち上げたい」と山下さんは語る。
そして大きな課題と考えているのが、ポリウレタン製コンドーム以外の分野だ。社名にも冠する“ゴム”コンドームが、全体的に低調傾向にある。現在、市場の48%が薄物コンドーム(ポリウレタンや合成樹脂などの新素材)で、ゴムという素材自体の訴求力が弱くなっていることや、「安いコンドーム」よりも「高いけど良いコンドーム」の方が支持されていることが要因なのだという。
「定期的に新製品を出して、中ヒット、大ヒットを狙っていく。正直なところ、ゴム製のコンドームは出尽くされていて新しいアイデアが出にくいが、いいアイデアを出して、今秋、来春にはそれぞれ新商品を出す予定」
コンドームの強力なトレンドは“薄い”だが、それ以外にも“女性目線”“分厚くて長持ちする”“ブランドとのコラボ”などの選択肢もある。そちらの方面に強化していくのか、それとも全く違うものが出てくるのか――それは今後に期待したい。
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