ブランディングとは、お客さまと企業との「幸せな関係づくり」:「売れる商品」の原動力(2/4 ページ)
「ブランド」の本質は、自分たちと世の中とが互いに“幸せな関係”になっていくところにあります。
独自性を力に変え、成長の源泉にしていく
私がよくお話しする1つの事例があります。明治の「キシリッシュ・パフューム」というガムです。ずっと右肩上がりだった日本国内のガムの消費量が、2004年あたりから下降に転じました。少しでも需要を増やそうと、各社は新製品の開発にしのぎを削り、例えば「味が長持ちするガム」なども相次いで発売されています。
“二匹目のどじょう”と言いますが、何かがヒットすると、それに便乗して、あるいはそれに負けまいと、同じような企画を打ち出すという例は世の中に珍しくありません。しかし、明治のガム開発チームは、ものさしを変えて、そもそも自社の強みは何なのかと考えたのです。その結果、自社には「吐息に香りを付ける」という他社に負けない技術力があることを再発見したのです。だったらそこに最大限の価値を削ぎ出していくことが、自分たちの会社のためにも消費者のためにもよいのではないか。
こうして2012年に誕生したのが「キシリッシュ・パフューム」というガムでした。パッケージも香水の瓶をイメージしたものにし、“息香る”というコンセプトで発売して好評を得たのです。
人が口臭を意識するのは恋愛と関連し、恋愛を意識し出す年ごろから口臭を気にするというデータもあるようです。この“息香る”ガムが、ガム離れが進んでいる若者層からの支持を獲得し売り上げを伸ばせたのは言うまでもありません。
外側のものさしで測って、他と“差別化”したのではなく、そもそものものさしを自分たちの会社の強みは何かというところに定め、他にはない独自の価値を作り出した。まさに、自分たちの「らしさ」をクリアにし、その「らしさ」をお客さまと共有することに成功したのだと思います。
たとえマーケットの中にあるものさしで戦うということでも、根本は自分たちの独自性をいかに力に変えていくかにひもづいていなければならない。何かと戦って拡大していくということではなく、自らの持っている独自性を成長の源泉にしていく。そういう発想で「ブランド」を考えていかなければならないと私は思っています。
外にあるものさしの中で競争優位性を作っていくだけの「ブランド」の発想から、独自性を磨いていく「ブランド」へと視点を転換することは、どの分野、どの業界においても、とても大切なことなのです。
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