えっ、「介護」って造語なの? 市場をつくった“生みの親”に聞く:水曜インタビュー劇場(アイデア公演)(5/6 ページ)
「フットマーク」という会社をご存じだろうか。東京の両国に拠点を置く、従業員60人ほどの会社だが、これまで2つの市場をつくってきた。1つは「水泳帽子」、もう1つは「介護おむつカバー」。一体、どのようにして市場をつくってきたのだろうか。
発売10年後、徐々に売れ始める
磯部: 「病人用おむつカバー」というゴム印をつくって、白い紙に黒いスタンプを押していました。商品は、透明のビニール袋に入れていただけ。「病人用おむつカバー」と書かれた商品をパッと見て「これはおもらしで悩んでいる人向けのモノか」と分かった人はほとんどいなかったのではないでしょうか。
土肥: では、なにがきっかけで売れ始めたのでしょうか?
磯部: 実は……それがよく分からないんですよ。テレビや新聞などに広告を打ったわけでもありませんし。
土肥: いつごろから売れ始めたのでしょうか?
磯部: 10年くらい経ってからですね。商品名を「介護おむつカバー」にしてから、徐々に売れ始めました。その後は、何度も商品を改良しました。最初に発売したモノはナイロンでできていたので、冬に着用すると「冷たい」と感じてしまう。それではいけないので、温かく感じられる素材に変更しました。また、最初のモノはウエストをひもで調整していたのですが、それでは使いにくいのでマジックテープにしました。さらに、金属のボタンが付いていたのですが、それもさびにくいモノに改良しました。このほかにもさまざまなモノを改良していきました。
介護おむつカバーを発売してから40年近く経ちますが、まだまだ改良の余地は残っています。「この商品は完璧だ」と思ったら、そこで終わってしまう。「ちょっとでも、よくする」「なんとかする」という想いがなければ、商品ってよくならないと思っていますので。
土肥: 1984年に「介護」という言葉を商標登録されたわけですが、その後この言葉を使わせてほしいという会社が殺到したそうですね。
磯部: はい。保険会社の方が来られて、「自社で介護保険を考えていますので、『介護』という言葉を使ってもよいでしょうか?」と。このほかにも、たくさんの方が来られて「『介護』という言葉を使ってもいいですか?」と言われました。
土肥: で、どうされたのですか?
磯部: 「ご自由にどうぞ」と。
土肥: えっ、登録商標なので使用料をいただけるのでは?
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