電通とFacebookの不正業務から考える ネット広告の問題点とは?:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(1/4 ページ)
電通とFacebookが全く同じタイミングで広告の虚偽報告について謝罪した。この一連の不祥事はネット広告市場が拡大する過渡期の現象とも捉えることができる。今後、業界全体としては、どのような対策が求められるのだろうか。
広告代理店最大手の電通が、ネット広告に関して不正取引があったことを明らかにした。偶然にも、全く同じタイミングでFacebookが広告の虚偽報告について謝罪を行っている。
ネット広告は、広告主が費用対効果に関する客観的な情報を入手しにくいという特徴がある。ネット広告は、紙媒体と比較するとまだまだ小さい市場だが、いずれ広告の主流となる可能性は高い。一連の不祥事は過渡期特有の出来事かもしれないが、業界全体として、より客観的に費用対効果を検証できる仕組みを構築していく必要があるだろう。
オペレーションが煩雑なオークション形式
電通は9月23日、インターネット上の広告に関して、虚偽報告をはじめとする不正取引があったと発表した。対象となった企業は100社を超え、総額は2億3000万円に上るという。不正が行われたのは、主にネット広告の成果を顧客企業に示すレポートの中身である。
電通は広告代理店なので、広告主となる企業の代わりに媒体から広告枠を購入するのが仕事だ。電通は購入した広告枠について、媒体にアクセスした利用者が、どのくらいの頻度で広告を見たのかといったデータを取りまとめ、定期的に広告主に報告を行っている。広告主はそのレポートを見ながら、広告の費用対効果を検証し、次の広告出稿計画を練ることになる。
ネット広告というと、かつては広告枠を一定期間確保したり、所定のクリック数に到達するまで、同じ広告を特定の場所に貼り続けるといった形式が多かった。こうした従来型のネット広告では、掲載料が1カ月当たり10万円、あるいは1000クリック10万円など、分かりやすい価格が設定されていた。これは、基本的に紙媒体の広告と同じ仕組みと考えて良い。
しかし、現在ではこうした従来型のネット広告は少なくなっており、価格をオークションで決める形式が増えている。今回、不正が発覚したのもこのタイプである。
オークション形式では、広告の配信状況を見ながら、常に入札価格を変えていく必要がある。広告主の予算には上限があるので、予算額との兼ね合いや広告を打つ期間、露出頻度などを総合的に考えながら、随時入札価格を決定していく。この作業が思いのほか大変なのだ。
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