電通とFacebookの不正業務から考える ネット広告の問題点とは?:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
電通とFacebookが全く同じタイミングで広告の虚偽報告について謝罪した。この一連の不祥事はネット広告市場が拡大する過渡期の現象とも捉えることができる。今後、業界全体としては、どのような対策が求められるのだろうか。
入札価格の設定が広告配信の巧拙を決める
例えば、ある広告主が広告代理店に対して、1カ月で500万円という予算で、特定の顧客層にターゲットを絞った広告を配信するよう依頼したと仮定しよう。広告価格は入札で決まるので、単価を安くすれば、より多くの広告を配信することができる。しかし、それ以上、高い単価を提示する他の広告主がいれば、メディアにはその広告主の広告が配信されてしまう。
顧客となっている企業の広告を優先して配信しようと思った場合には、単価を上げればよいわけだが、今度は、お金が掛かりすぎて、与えられた予算内では十分な数の広告を配信できなくなってしまう。この辺をいかに調整するのかが担当者の力量ということになるだろう。
今回の発表で電通は、担当者の力量不足から、うまく配信調整ができず、故意にレポートの中身を改ざんする結果になったと認めている。対象となった広告の詳細は不明だが、恐らくは、当初の価格では上手く入札できず、後になって高い単価で入札したものの、結局は十分な数の広告を打てなかったといったところだろう。こうした状況をそのまま顧客には説明せず、報告書の内容を改ざんして、予定通り配信したと報告していたわけだ。
今回の件が発覚するきっかけになったのは、何と最大の広告主の1社であるトヨタ自動車(以下、トヨタ)からの指摘だった。トヨタはこの件について詳細な説明は行っていないが、恐らく、想定されたレスポンスがないため、広告が予定通りに配信されていないことを察知した可能性が高い。あるいは、あらゆるネット媒体をチェックし、配信状況をチェックしていたのかもしれない。
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