電通とFacebookの不正業務から考える ネット広告の問題点とは?:加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)
電通とFacebookが全く同じタイミングで広告の虚偽報告について謝罪した。この一連の不祥事はネット広告市場が拡大する過渡期の現象とも捉えることができる。今後、業界全体としては、どのような対策が求められるのだろうか。
広告主が不正に気付くことは困難
トヨタは巨大企業であり、広告宣伝にはかなりの人的リソースを割いている。このため今回のような不正に気付くことができたが、多くの企業にとって、こうしたチェックを行う余裕はないだろう。ネット広告における最大の問題は、基本的に広告代理店やメディアからの報告を信用する以外に、広告の効果を判定する材料がないという点である。
この話は、実は海外でも問題視されている。SNS大手のFacebookはくしくも電通と同じ23日、自社の動画広告の平均視聴率時間を過大に算出し、それを広告主に報告していたことを明らかにした。
Facebookではこれまで、動画広告が再生された時間を視聴数で割り、1人当たりの平均的視聴時間を算出していた。しかし、実際には広告を3秒以上見た人の数で割るという計算を行っており、その結果、見かけ上の平均視聴時間が長くなっていたのである。
動画広告の分野においては、広告を3秒以上見る人と、それ以下の人には天と地ほどの差がある。動画広告は利用者に本気で視聴させるまでが大きなカベとなっており、3秒以上見る人だけを視聴時間にカウントすれば、かなりの視聴時間を稼げるのは当たり前である。
実際、Facebookでは、平均視聴時間を60〜80%も長く計算していたというが、そうなってしまうと、広告主は動画がクリックされれば、長く広告を見てもらえると勘違いしてしまうだろう。これでは広告の効果に関するデータが信用できないものとなってしまう。
今回、電通で問題になったケースでは、少ないながらも、広告主がチェックできる余地が残っていた。しかしFacebookのケースでは、全てが同社の内部情報であり、広告主がこの数字をチェックすることは事実上不可能である。
関連記事
- 電通、ネット広告で不適切業務 約2億3000万円 運用実績など虚偽報告、過剰請求も
電通がネット広告で不適切な業務をしていたことが発覚。 - 激変するタクシー業界 「初乗り410円」本当の狙いは?
シェアリング・エコノミーの台頭や、自動運転技術の進化によって激変するタクシー業界――。そのような中、東京のタクシー初乗り運賃を410円にする実証実験が8月から始まった。その狙いは、単に近距離のタクシー需要を喚起するだけではない。 - 豊洲新市場の土壌汚染はどのくらい深刻なの?
東京都の小池百合子知事が、築地市場の豊洲への移転延期を正式に表明した。延期の理由で特に問題となっているのは環境問題なのだが、実際のところどのくらい深刻なのだろうか。 - モスとマックの業績が急回復 それでも安心できない両社共通の悩みとは?
このところ、モスフードサービスとマクドナルドの業績が急拡大している。その理由とは? この流れは今後も続くの? 経済評論家、加谷珪一が解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.