2015年7月27日以前の記事
検索
連載

電通とFacebookの不正業務から考える ネット広告の問題点とは?加谷珪一の“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)

電通とFacebookが全く同じタイミングで広告の虚偽報告について謝罪した。この一連の不祥事はネット広告市場が拡大する過渡期の現象とも捉えることができる。今後、業界全体としては、どのような対策が求められるのだろうか。

Share
Tweet
LINE
Hatena
-

広告主が不正に気付くことは困難

 トヨタは巨大企業であり、広告宣伝にはかなりの人的リソースを割いている。このため今回のような不正に気付くことができたが、多くの企業にとって、こうしたチェックを行う余裕はないだろう。ネット広告における最大の問題は、基本的に広告代理店やメディアからの報告を信用する以外に、広告の効果を判定する材料がないという点である。

 この話は、実は海外でも問題視されている。SNS大手のFacebookはくしくも電通と同じ23日、自社の動画広告の平均視聴率時間を過大に算出し、それを広告主に報告していたことを明らかにした。

 Facebookではこれまで、動画広告が再生された時間を視聴数で割り、1人当たりの平均的視聴時間を算出していた。しかし、実際には広告を3秒以上見た人の数で割るという計算を行っており、その結果、見かけ上の平均視聴時間が長くなっていたのである。

 動画広告の分野においては、広告を3秒以上見る人と、それ以下の人には天と地ほどの差がある。動画広告は利用者に本気で視聴させるまでが大きなカベとなっており、3秒以上見る人だけを視聴時間にカウントすれば、かなりの視聴時間を稼げるのは当たり前である。

 実際、Facebookでは、平均視聴時間を60〜80%も長く計算していたというが、そうなってしまうと、広告主は動画がクリックされれば、長く広告を見てもらえると勘違いしてしまうだろう。これでは広告の効果に関するデータが信用できないものとなってしまう。

 今回、電通で問題になったケースでは、少ないながらも、広告主がチェックできる余地が残っていた。しかしFacebookのケースでは、全てが同社の内部情報であり、広告主がこの数字をチェックすることは事実上不可能である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る