コンセプトは「世界初」 イケメン大暴れ『HiGH&LOW』が10代女子の心をツカむ理由(3/4 ページ)
LDHグループ総出演の総合エンターテイメントプロジェクト『HiGH&LOW』。コンテンツとメディアミックスの成功例として学ぶべき点が多い本作は、何を目指して生まれたのか? 日本テレビ植野浩之プロデューサーに聞いた。
ティーンの価値観に“刺して”いく
――ティーンがメインターゲットだと、マーケティングは難しくなりませんか?
植野: 『HiGH&LOW』に限らず、全てにおいてそうだと思うんですが、ティーンのもつ特性にフォーカスを当てていくんです。“衝動”や“カッコいいものやかわいいものが絶対という価値観”――そこに刺していくことが、絶対に必要だと思っています。
たくさんいるキャラクターが、みんなカッコよくて、みんなオシャレで、マネしたくなる。「こういう男の子と付き合いたい」「こういう男の子に囲まれたい」という気持ちや、「こういう男の子になりたい」「こういう男の子になって女の子にモテたい」という気持ちが、テンションの上がる音楽とともに総体になっているのが、『HiGH&LOW』という作品です。
今のテレビは、F2〜F3層といわれる30〜60代の女性が、視聴率を取る上で非常に重要になっています。もちろん人によって差がありますが、この層は“ちゃんとしたストーリー”で“ゆっくりしたスピード”のドラマを見ることに慣れている。そういう層には、『HiGH&LOW』は正直向かないですよね。説明もざっくりしているし、スピードも速すぎるし、まず登場人物が多すぎて覚えられないかもしれない。なんのために戦っているのかも明確じゃないし。
――琥珀さん(AKIRA)のために戦っているのかと思っていました。
植野: そうそう、それはそうです。そういうのを感覚的に理解する人は「仲間のために戦ってるんだね〜」と受け入れますが、頭で考える人だと「正義のため」とか「国のため」とか、明確になっていないと見にくい。多くの作品は二元論になっているので、善悪がはっきりしている方が見やすいんです。でも『HiGH&LOW』は全員主役なので、悪人は作っていない。
――唯一「家村会」が明確に悪いくらいですね。植野さんは『HiGH&LOW』のほかにも、『お兄ちゃん、ガチャ』(2015)や『黒崎くんの言いなりになんてならない』(テレビ版2015、映画版2016)といったティーンがメインターゲットとなる作品のプロデューサーをいくつも務めています。女子中高生のハートをつかむ作品を作る秘訣(ひけつ)はなんでしょうか。
植野: 僕が言うと恥ずかしいんだけど……“キュンとできるかどうか”ですね。僕は脚本を作るときや編集するときは、女の人の気持ちになるんですよ。女の人が見たときに、どこでテンションが上がるのかを、すごく考えます。
――植野さんは男性なのに、どうしてティーンのトキメキポイントとズレないんでしょうか?
植野: 中身が幼いのかな(笑)。ただ、仕事柄、10代の子と普通に話すことが多いのは大きいですね。誰と話すときも、あんまり話す内容は変わらない。いつも人に会うと「何が一番面白いの?」「何でテンション上がるの?」「どういう子が好き?」と聞いています。誰に対しても、興味があることを普通に聞いちゃうくせがありますね。
――それはずっと昔からですか?
植野: 昔っからかもしれません。あと、作品を考えているときに、2つの脳があるんですよね。1つは『HiGH&LOW』のように「自分たちがカッコいいと思っているものを提示する」という脳で、もう1つは「どういう風に一般層に広げていくのか」というマーケティング的な脳。女性を対象にしたコンテンツを企画するときは、後者の脳で作ります。だから初めから、周りにいる女性に聞くんですよ。
――テレビ業界には、女性がいっぱいいるんですか?
植野: いや、僕の周りに特に多いですね(笑)。女の人の手厳しい意見をよく聞きます。「かっこ悪い!」とか「全然面白くない!」とかを聞いて、撮りながらでも取り入れていきます。周りの意見を聞かないと、男っぽくてダサくなってしまう。みんなどんどん聞いていけばいいのにと思います。
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