本が売れない時代に本を置く異業種店が増えているのはなぜ?:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(2/4 ページ)
出版不況が叫ばれて久しいですが、昨今、店に本を置くアパレルショップや雑貨屋、カフェなどが増えています。そして、それらは共通して繁盛しているというのです。その理由を探ります。
本で回遊性を高める無印良品
今までなら「こんなところに本?」というような意外な場所で、本が置かれるようになっています。
ざっと挙げただけでもこれだけの店が本を置くようになっています。
では、それぞれの企業は本をどのような位置付けでとらえているのでしょうか。図表内のいくつかの店舗を見てみましょう。
東京・有楽町にある「無印良品 有楽町店」は、無印良品として最大の売り場面積を持ちます。この店には2Fにつながる木製の書棚があります。店の書籍売り場「MUJI BOOKS」には、約2万冊の本が並んでいます。従来の無印良品の売場にも本はありましたから違和感はないのですが、その書籍在庫数の多さには驚きます。「食」や「生活」といったテーマを中心に本を品ぞろえし、中には小説や実用書、写真集もあります。本の近くには関連した雑貨を置くなどして売場内の商品の連動性を作っています。
同社によれば、「本は商品の製造過程や素材のこだわりを伝えられる最高のメディア」とのこと。本があることによって無印良品が品ぞろえする衣料品や家具、家電、雑貨などの売場を回遊してもらうことができるという仕掛けです。
来店客が普段はそのまま通り過ぎてしまうところを、本があることで商品に気付いてもらえる効果もあるのです。来店客の回遊性を高め、関連購買を促し、結果として客単価を引き上げる役割を本が果たしていると言えます。私が店頭で見ているときも3人に1人くらいが本をきっかけに店内の商品へと誘導されていました。例えば、料理関係の本をきっかけに鍋を見るなど、関連購買へとつなげるフックになり、本が客単価アップの一因になっています。
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