本が売れない時代に本を置く異業種店が増えているのはなぜ?:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(3/4 ページ)
出版不況が叫ばれて久しいですが、昨今、店に本を置くアパレルショップや雑貨屋、カフェなどが増えています。そして、それらは共通して繁盛しているというのです。その理由を探ります。
CCCがきっかけに
アパレルと雑貨を扱う「ニコアンド(niko and…」が2014年秋、東京・原宿にオープンした旗艦店「ニコアンドトーキョー」には書籍コーナーがあります。
そこには作家・三島由紀夫の著書など約2000冊が並んでいます。同店はもともと衣料品に大胆に雑貨を加えることで成長してきた業態です。本を置くことによってその世界観にさらなる広がりが出ているように思います。「モノがあふれ、リアルな店舗では本当に必要なモノを見つけるのが難しい」(同社)ため、本があることで新しい発見をして購買につなげる効果があるのです。
横浜・みなとみらいにある「マリン アンド ウォーク ヨコハマ」という商業施設に入っている店舗はライフスタイル提案をしている店が多いのですが、中でもフレッド シーガルやトッドスナイダーといった店は本を提案しています。
旅行代理店大手のエイチ・アイ・エスは、2015年秋に東京・表参道の店を旅行相談窓口やカフェと併設して本を売る店、「旅と本と珈琲とOmotesando(表参道)」にリニューアルしました。店内には旅行とは別にカフェで本を楽しむ人も多く、結果的に新規顧客の集客に一役買っているようです。
こうした店が増えるきっかけになったのが2011年にカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が開発した「代官山T-SITE」です。コーヒーを飲みながら、店内の椅子でゆったりと購入前の本が読めます。本を買うだけでなく、本がある雰囲気を楽しめる空間です。そこにはジャズレストランのブルーノートと協業して作ったラウンジや、スターバックスと一体になった空間、コンシェルジュがいる旅行カウンターまであります。
本を中心とした新たな複合提案が、世の中のさまざまな業態開発のきっかけとなったのです。「これこそライフスタイル提案である」というきっかけを与えた店。それがCCCのT-SITEなのです。その後も二子玉川 蔦屋家電や大阪の枚方T-SITEなどを開発して話題になっています。
本そのものは既に時代遅れ感のあるコンテンツとなっている節もあるのですが、店の品ぞろえの一環、空間演出の1つとして考えると、まだまだ非常に使い勝手の良いコンテンツです。人々が行きたくなる店を作ろうと思うと、ライフスタイル提案に直接つながったり、自分の求めるスタイルに気付かせてもらえたりする、とても効果的なアイテムになのです。
先日、CCCの増田宗昭社長にお会いした際に興味深いお話を伺いました。「実はこのT-SITEの構想は1983年に創業したときから温めていたものだった」と言うのです。
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