小久保工業所、なぜヒット商品がどんどん世に出るのか:水曜インタビュー劇場(アイデア公演)(4/5 ページ)
和歌山県に本社を構える「小久保工業所」をご存じだろうか。従業員80人ほどの会社なのに、新商品を年間100種類ほどリリースし、次々にヒット商品が誕生している。なぜ、こんなスゴいことができるのか。同社の社長に話を聞いた。
お客さまに「かゆい」と感じさせてはいけない
小久保: 例えば、フック。以前、フックといえば黒色か白色かウッド調の色しかありませんでした。なぜ色付きのモノしかなかったかというと、当時は透明のノリがなかったんですよね。つまり、色付きのノリを隠すために、フックに色が付いていました。しかし、透明の両面テープが登場したことで、他社から透明のフックが発売されました。
土肥: 透明のフックだと「ひと工夫」がないですよね。
小久保: そうなんです。透明のフックだと、価格競争に巻き込まれるのは目に見えています。では、どうしたか。フックの裏に両面テープが付いているわけですが、それをめくろうとしたところ、めくりにくかったんですよね。「面倒」「難しい」と感じたわけですが、自分がそう感じたということは他の人も同じようなことを考えているかもしれない。めくりやすくするために、両面テープを少し長くしました。
土肥: 少し長くすることで、「面倒だなあ」「難しいなあ」という課題を解決されたわけですね。
小久保: はい。ただ、時代はどんどん変わっていきます。冷蔵庫の扉の部分などに、フックを付けている人がいますよね。裏面に磁石が付いているので、扉の部分にペタっとくっつけることができます。ただ、最近の冷蔵庫って表面がガラスでできているモノが増えてきて、そうした冷蔵庫には磁石がくっつかないんですよね。
裏面が磁石のフックを使っていた人は困っていました。「以前の冷蔵庫にはフックを使って、必要な書類をはさんでいたのに……」と新たな悩みがでてきたわけです。
必要な書類などをはさんでいたのに……といった感じで。そこで、磁石に代わる素材はないかと考えました。それまでの両面テープは一度使ったら粘着力が落ちていましたが、何度も使えるモノはできないかと考えました。両面テープを開発している会社に相談して、粘着力が落ちないモノを開発してもらい、それをフックの裏に貼ったところ、たくさんの人にご購入いただきました。
商品というのは「かゆいところに手が届くモノでなければいけない」という人がいらっしゃいますが、私は「お客さまにかゆいと感じさせてはいけない」と考えています。
関連記事
- 「YAMAHA」のプールが、学校でどんどん増えていったワケ
「ヤマハ発動機」といえば、多くの人が「バイクやヨットをつくっている会社でしょ」と想像するだろうが、実はプール事業も手掛けているのだ。しかも、学校用のプールはこれまで6000基以上も出荷していて、トップブランドとして君臨。なぜ同社のプールが増えていったのかというと……。 - 眼鏡がいらなくなる? 世界初の「ピンホールコンタクトレンズ」にびっくり
近視や老眼をコンタクトレンズ1枚でカバーできる「ピンホールコンタクトレンズ」をご存じだろうか。現在、臨床研究を進めていて、2017年度中の商品化を目指しているという。どのような原理でできているかというと……。 - なぜ地図で「浅草寺」を真ん中にしてはいけないのか
地図を作成している編集者に、2枚の地図を見せてもらった。1枚は浅草寺が真ん中に位置していて、もう1枚は浅草寺が北のほうにある。さて、実際に地図に掲載されているのは、どちらなのか。答えを聞いたところ、予想外の結果に!? - 過去最高! 新江ノ島水族館がV字回復したワケ
新江ノ島水族館(えのすい)の来場者数が好調だ。2004年にリニューアルしてから、来場者数は減少傾向だったのに、2014年にV字回復。翌年には、過去最高を記録した。ここ数年、えのすいで何が起きているのか。広報室長に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.