2015年7月27日以前の記事
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なぜ滋賀県は北陸新幹線「米原ルート」に固執するのか?杉山淳一の「週刊鉄道経済」(5/6 ページ)

北陸新幹線延伸区間は「小浜京都ルート」にまとまるだろう。しかし、滋賀県は費用対効果に優れた「米原ルート」を譲らない。北陸地域も近畿地域も望まない「米原駅乗り換え案」は、実は滋賀県にもメリットがない。それでも滋賀県は主張しなくてはいけない。これは「我田引鉄」という単純な話ではない。

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滋賀県の真意

 JR西日本の湖西線は琵琶湖西岸を通る路線だ。起点は京都府の山科。終点は滋賀県の近江塩津。ほとんどの列車が京都発着となっている。また、近江塩津からは北陸本線に直通する。山科駅の次の大津京駅から滋賀県にあり、ほぼ全線が滋賀県内にある。

 湖西線は元々、北陸方面と近畿地域を短絡するルートとして作られた。大阪発着の金沢行き「サンダーバード」が定期列車として24往復あり、繁忙期に臨時列車が走る。かつては大阪と札幌を結ぶ特急「トワイライトエクスプレス」が走り、大阪と新潟を結ぶ「きたぐに」も末期は湖西線経由だった。米原経由北陸本線の列車を高速化するために建設されたから、線路規格は高速度対応で、時速130キロメートルで走行できる。

 普通列車と快速列車は京都〜近江舞子間が日中1時間あたり4往復、近江舞子〜近江今津間が1時間あたり2往復、近江今津〜近江塩津間1時間あたり1往復だ。滋賀県内を走っているけれど、京都への通勤・通学輸送が主になっている。近江舞子より北側は運行本数も少なく、主役は近畿と北陸を結ぶ特急列車だ。

 JR西日本は、北陸新幹線が小浜京都ルートで延伸開業した場合、湖西線を並行在来線として分離する意向だ。サンダーバード24往復が新幹線に移行するから、これは当然の考え方と言える。ローカル区間より都市間連絡特急の通過需要が主な役割で、新幹線開業とともにローカル輸送のみとなってしまう。北陸新幹線金沢延伸前の北越急行ほくほく線に似ている。

 整備新幹線の建設の枠組みは、並行在来線化について、JRからの分離までは定められている。では湖西線はどうなるか。貨物列車も引き続き通過するし、京都方面への一定数の需要がある以上、廃止するわけにはいかない。しかし、収入源となる特急列車は走らないから、民間企業は引き取れない。第三セクターとして存続させるなら、滋賀県が主体にならざるを得ない。

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