なぜ滋賀県は北陸新幹線「米原ルート」に固執するのか?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)
北陸新幹線延伸区間は「小浜京都ルート」にまとまるだろう。しかし、滋賀県は費用対効果に優れた「米原ルート」を譲らない。北陸地域も近畿地域も望まない「米原駅乗り換え案」は、実は滋賀県にもメリットがない。それでも滋賀県は主張しなくてはいけない。これは「我田引鉄」という単純な話ではない。
京都府と滋賀県の立場
小浜舞鶴京都ルートは与党PTの委員長が提案したルートだ。委員長は京都選挙区で当選した参議院議員の西田昌司氏である。委員長案だから3ルートの1つに残ったわけで、あからさまな「我田引鉄」だ。
もっとも、その心境は理解できる。小浜大阪直行ルートで新駅を期待していた亀岡市が肩すかしを食らっているからだ。亀岡市には同情される理由がある。我田引鉄の匂いを消すために「将来の山陰新幹線のルート」という説を持ち出して、鳥取県・島根県の理解を得たい。特に鳥取県出身の有力者、石破茂氏の理解を得たい。
米原ルートは、現状では乗り換え案として不利な点も多い。けれども、リニア中央新幹線の名古屋〜大阪間の政府支援が決まったことで、将来的には東海道新幹線の過密ダイヤが解消され、直通運転ができるという期待がある。東海道新幹線直通となれば、最も建設費が安く、所要時間も短く、投資効果はさらに大きくなる。
しかし、どちらも不確定要素ばかりの案である。現実に投資する上で、こんな不安定な要素を材料にできない。山陰新幹線も北陸・中京新幹線も新幹線の基本計画に含まれており、必要な時期が来れば建設できる。舞鶴〜京都ルートについては山陰新幹線として整備し、京都を交差して奈良に至り、リニア中央新幹線の奈良駅に接続したほうが良さそうだ。これなら東京から山陰の移動も高速化できる。北陸新幹線に相乗りする必要はない。
ただし、米原ルートを強硬に推進する滋賀県には、もっと切実な事情がある。滋賀県にとって重要な問題は北陸新幹線のルートではない。小浜経由ルートも米原ルートも県庁所在地の大津市を通らない。東海道新幹線も大津市を通らないし、かつて栗東市に南琵琶湖駅を誘致し着工したにもかかわらず、建設反対派の知事が当選したため実現しなかった。滋賀県は本気で新幹線を必要としていないように見える。
では、なぜ滋賀県は強硬に米原ルートを主張しているか。小浜経由ルートでは困るからだ。なぜ困るかと言えば、並行在来線となる湖西線を押し付けられてしまうからである。
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