通称“海のF1レース”、ついに日本初開催のアメリカズカップとは何か?:日本チームも久々に挑戦(2/5 ページ)
1851年から続く世界最古の国際ヨットレース「アメリカズカップ」が、長い歴史の中で初めてアジアで開催された。予選レース「ワールドシリーズ」の最終戦となった福岡大会のレポートとともに、同カップが“海のF1”と呼ばれるゆえんなどを伝える。
オラクル・チーム・USAの“武器”
現在、アメリカズカップは3〜4年に一度行われていて、オラクル・チーム・USAは2010年、2013年と2連覇中。中でも2013年はニュージーランドに王手をかけられてから8連勝という驚異的な逆転優勝を果たし、大きな話題となった。
同チームは大手IT企業・米Oracleのラリー・エリソン会長が2000年に立ち上げた。アメリカズカップは優勝者が次の大会ルールを定めることができるため、エリソン会長の強いリーダーシップの下、各国を転戦するワールドシリーズの導入や、高速で走るカタマラン艇(双胴船)の採用など、これまでに数々の改革が行われてきた。
さらに、オラクル・チーム・USA自身に対しても、IT企業ならではの“武器”を生かした取り組みを行っている。それはデータ戦略だ。オラクル・チーム・USAのヨットや選手(クルー)には1000個以上のセンサが付いていて、風速や風向き、風圧、水温、波の高さ、ヨットの角度、選手の心拍数など、さまざまなデータを収集。トレーニングの中でテスト走行しながら集まるデータ量は1日あたり約500ギガバイトに上る。そうして蓄積された膨大なデータを分析して、レースの戦略に生かしているのである。もちろんレース本番中にもデータをリアルタイムで収集、解析して、ヨット本体と並走するチェースボートからコース取りなどの指示を常に選手に送っている。
オラクル・チーム・USAの戦略担当であるアンドルー・キャンベル選手は「これまで選手は良い走りができているかどうかというのは、経験に基づく感触でしか分からなかったが、その裏付けがデータによって示されるようになったのは大きな価値だ」と力を込める。
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