日本の宇宙ビジネス 16年はどこまで進んだ?:宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)
世界レベルで宇宙ビジネスが盛り上がる中、2016年は日本も大きく前進した年だった。どのようなことがあったのか、この1年を振り返ってみたい。
異業種企業による投資や支援が拡大
今年、国内では異業種企業による宇宙領域への投資や支援も加速した。前述のHAKUTOは通信事業大手のKDDIとオフィシャルパートナー契約を、自動車メーカーのスズキ、素材大手の東レ、接着剤大手のセメダインとコーポレートパートナー契約を、さらには人材大手のインリジェンス、工業デザイン大手のRDS、IT・マーケティング大手のリクルートテクノロジーズなどとサポーティングカンパニー契約を結んだ。
また、宇宙輸送ベンチャーのPDエアロスペースは、旅行代理店大手のエイチ・アイ・エス(H.I.S.)、航空会社大手ANAホールディングスと民間主導による宇宙機開発を行うことで合意。宇宙旅行をはじめとする宇宙輸送の事業化に向けた資本提携を発表した。出資額は5000万円だが、今後の追加投資に期待が集まっている。
さらに12月には、冒頭に述べたように、ソフトバンクがOneWebに巨額投資をすることが報道されるなど、さまざまな業種・業態の企業が新宇宙産業にビジネス参入してきている。米国ではGoogleなど大手IT企業を中心とした動きが多いが、このように多様な企業が宇宙産業に興味を示しているのは日本市場の特徴とも言える。
このように多方面で大きな前進があった日本の民間宇宙ビジネスだが、2017年もその流れが続くことを期待したい。最後に、2015年に筆者が主催した宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE」が、2017年2月28日に「SPACETIDE 2017」として再び開催を予定している。
今回のテーマは「つながりが、新たな宇宙ビジネスを加速する」。年明けに詳細を公開予定なので、ご興味ある方はぜひご参加いただきたい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2015」企画委員会代表。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。
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