全自動衣類たたみ機が創り出す、未来の姿:日本発のイノベーション(1/3 ページ)
洗濯物をたたんでくれるロボットがあれば……。2017年、その願いを実現する製品「ランドロイド」の販売がいよいよ始まる。開発したセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズによると、ランドロイドは私たちの暮らしだけでなく、日本のモノづくり産業を変える可能性も秘めている。
全自動で洗濯物をたたむ機械「ランドロイド」が注目を集めている。2017年3月、いよいよ予約販売が始まる。私たちの将来の生活を変える、大きな一歩となるかもしれない。この世界初の技術を10年かけて開発したのは、セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ(以下セブン・ドリーマーズ)。「日本のイノベーションで世界を驚かせたい」と意気込む阪根信一社長に、ランドロイドが創り出す可能性と未来像について聞いた。
セブン・ドリーマーズの理念は「世の中にないモノを創り出す技術集団」。「世の中に存在しない」「生活を豊かにする」「技術的なハードルが高い」という3つの条件を満たすモノの開発を手掛けている。これまでに、いびきや睡眠時無呼吸症候群の対策器具「ナステント」、完全オーダーメイドによる高精度の「カーボンゴルフシャフト」を製品化してきた。
ランドロイド開発の歴史はそれらよりも長い。2005年、開発テーマを探していた阪根社長が、妻に意見を聞いてみたことがきっかけだという。調べてみると、4人家族の場合、洗濯物をたたんでしまう作業に費やす時間は一生で9000時間。375日も充てていることが分かった。
当時、洗濯物を全自動でたたむというアイデアを社内の技術者らに提案したところ、「みんなどん引きだった」(阪根社長)。「5年はかかる」と覚悟して始めた挑戦だった。
衣類を広げることがハードル
必要な作業は、洗濯物を目で見て、どんなたたみ方をするか考えて、手を動かすこと。私たちが日々、当たり前にこなしている作業だ。それを自動化するには、さまざまな技術が必要となる。衣類の形状を認識する画像解析技術、最適なたたみ方を判断する人工知能(AI)、細かい動きで実際にたたむロボティクス技術――この3つを組み合わせて開発に取り組んできた。
10年にわたる開発期間で最大のハードルは、無造作に放り込まれた洗濯物を、形状が認識できるように広げることだった。広げた状態から自動でたたむ技術は3年ほどで開発できたが、人の手で洗濯物を広げる作業が必要になる。「それでは意味がない」と、あくまで全自動にこだわった。開発が暗礁に乗り上げた時期もあったが、アイデアを出し合い、試行錯誤を重ねて技術を確立した。
当初は技術者3〜5人のチームで開発を進めていたが、今では55人の規模になった。大手家電メーカー出身のベテラン技術者が集うビッグプロジェクトに成長している。
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