2017年、日本の株式市場はこう動く:“いま”が分かるビジネス塾(4/4 ページ)
2017年における日本の株式市場はどう推移するのだろうか。期待と不安が入り交じる難しい市場環境ではあるが、これまでのトランプ氏の主張から、ある程度までなら市場の動きを予測することはできる。
金融株はよい投資対象
では、内需関連銘柄はどうだろうか。注目度が最も高いのはやはり銀行株だろう。その理由は、日本の金利が米国に釣られて上昇する可能性があり、それによって銀行の利ざやが拡大するからである。
現在、日銀による量的緩和策が継続中であり、金利は意図的に低い水準に抑えられている。また長期金利というものは、最終的にその国の名目GDP成長率に収束するので、今の日本における経済状況では金利は上昇しないはずである。
だが短期的には、国内外の情勢によって金利は意外と大きく変動する。トランプ相場による米国の金利上昇が続いた場合、日本の長期金利もそれにつられて上昇する可能性は十分にある。実際、米国ほどではないものの、日本の金利も上昇を始めており、とうとう11月15日には10年物国債の金利がプラスに転じている。
銀行は預金という低金利の商品で預金者から資金を調達し、企業などに高い利率で貸し出すビジネスである。金利が上がると、利ざや(金利差)が拡大するので銀行の収益にはプラスである。金利上昇が続いた場合には、銀行も預金の金利を上げる必要に迫られるが、長期契約が多い生命保険会社は、さらに長期間、利ざや拡大の恩恵を受ける。金利上昇がホンモノだった場合には金融株はよい投資対象となるだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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