村田製作所が挑む交通インフラビジネスとは:自らシステム運用、データ提供に参入(2/2 ページ)
村田製作所は、センサーと無線通信で交通データを収集する「トラフィックカウンタシステム」を開発。さまざまな交通情報を提供するビジネスモデルを構築し、東南アジアを皮切りに海外で事業化を目指す。
東南アジアでは、多くの国で基本的な交通情報を収集できておらず、交通渋滞などの対策に手を付けられていないという。高機能なインフラシステムが設置されたケースもあるが、うまく運用されず、使われていない状態にあることも珍しくない。データのみを提供するサービスであれば、情報収集の需要に対応できることに加え、システムの持続的な運用が見込める。費用をかけずに設置できるというコンセプトも現地の状況に合っているという。
一方、IoT(モノのインターネット)など先進技術の活用が進む欧米で求められるのは、付加価値の高い交通データ。東南アジアでデータ活用の実績を作り、交通や天候、災害など、さまざまな種類のデータを提供できることを示したい考えだ。ニーズに合ったデータを効率的に入手したいという需要を取り込む。
東南アジアで実績づくり
バンコクでは、2015年11月から実証実験を始めた。現在は3回目の試験運用中で、交通量が多く渋滞が起こりやすい片側4車線の道路2カ所にセンサーノードを設置している。
実用化に向けて、蓄積したデータの検証を進める。また、大雨など環境変化への対応、識別精度の向上、量産に適した設計への変更といった課題も出てきた。改良を重ねながら、17年夏ごろの本格運用開始を目指す。本格運用では、センサーノードを数百メートル置きに300〜500台程度設置するという。
1月中にはインドネシアでも実証実験を開始する。さらにマレーシア、フィリピン、ベトナムなどにも事業展開し、運用実績をつくる方針だ。
新事業で市場ニーズ把握
システムの開発を担当する、米国法人ムラタアメリカのマネジャー、津守宏晃氏は「今後はハードの製品だけでは伸びない」と話す。現状では特定の顧客への依存度が高いことから、新市場を開拓し、経済動向に左右されにくい体質を強化することを会社として目指しているという。その中で、データ提供型の交通インフラシステムの開発に着手した。
トラフィックカウンタシステムについて、津守氏は「本業になる事業ではないが、市場ニーズの把握に役立てることができる。センサーなどの製品開発につながる知見を得られれば」と期待する。
あらゆる分野で進化する技術とともに、ニーズも変化している。トラフィックカウンタシステムは、その変化に対応するための鍵にもなりそうだ。
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