チャットボットがビジネスインフラになる日:日本でも活用が進む(2/3 ページ)
人工知能(AI)と言えば、自動運転や医療への応用で脚光を浴びているが、もちろんECや物販などのビジネスにも応用できる。その領域で今、注目を集めているのがチャットボットだ。米国の動きを見ても、チャットボットが消費者向けビジネスの主要チャンネルの1つになることはまず間違いないだろう。実は日本でも、その動きが加速し始めている。
サイバーエージェントがチャットボット事業を本格化
そんな中、驚くほどのスピードでチャットボット事業を展開し始めたのがサイバーエージェントだ。同社は2016年7月にチャットボット專門の子会社AIメッセンジャーを設立。同社の社長、石川大輔氏によると、事業の構想を思いついたのが2016年3月。「実質3カ月で事業を立ち上げました」と笑う。
「友人同士で情報をやり取りすることで課題を解決するという動きが若者の間で広がっていることに気づいたんです。ユーザー行動が『検索』から『チャットで質問』に変わってきています。その変化に、どこよりも速く対応すべきだと思ったんです」(石川氏)
立ち上げの速さだけではない。切り口やビジョンもユニークだ。米国の事例を見ても、コールセンター業務のコスト削減策としてチャットボットに乗り出す例が多いが、同社はチャットボットで企業の売上増も目指せると考えている。石川氏は「ユーザーの行動履歴データなどとAIを結び付けることで、ユーザー1人1人に合った情報をチャットボットが提供できるようになるはず」と話す。
「例えば、ユーザーの購買履歴データを基に『先日は商品をご購入いただき、ありがとうございました。その後、いかがですか?』とあいさつすれば、ユーザーのチャットボットや店舗に対する印象がよくなる。ユーザー1人1人への“個別対応”こそが、チャットボットの可能性の1つではないかと思うのです」(同)
将来的には、スマートフォンの位置情報データや、クーポン発行機能などとも連携し、チャットボットが近くの店舗まで道案内するほか、ユーザーとの対話の中でニーズにあったクーポンを発行するようになるという。
POSデータをはじめとするあらゆるデータがバックエンドで統合され、そのデータを基にAIが最適の接客シナリオを構築し、フロントエンドでチャットボットがユーザーと対話する。それが同社の思い描く近未来の接客の理想の姿だ。
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