トランプリスクが鍵 車各社、北米好調続くか:販売は伸びているが…(1/2 ページ)
自動車市場が好調な北米で販売を伸ばす大手自動車メーカー。一方でトランプ米大統領の政策による影響が見通せず、不透明感も強まっている。各社の対策は……。
大手自動車メーカーの北米戦略に一段と注目が集まっている。ガソリン安を背景に、スポーツタイプ多目的車(SUV)などのライトトラックを中心として足元の販売は好調。各社の収益源として重要性が増している。一方、米国のトランプ大統領による政策や市場の頭打ち感など、不透明感も色濃くなってきた。各社のリスクやその対策について、決算会見における幹部の発言を追った。
新車投入で販売好調
「米国市場は過熱している。販売台数は2年連続の過去最高を目指せるだろう」。投入した新型車が好調のホンダ。倉石誠司副社長は2017年3月期の米国販売台数について、明るい見通しを示した。大型車種の市場占有率が高まる中でも、セダンやハッチバックなどの種類をそろえた新型「シビック」が順調だ。
トヨタ自動車は「RAV4」「ハイランダー」「タコマ」といったライトトラック系車種の供給体制を改善。旺盛な需要に合わせて販売を伸ばしている。日産自動車もSUV「ローグ」が販売をけん引。富士重工業も「レガシィ」「アウトバック」「インプレッサ」などの主力車種が好調で、北米販売台数は8期連続の過去最高となる見通しだ。
インセンティブ上昇への対策は
一方、「競争環境は厳しい」(トヨタの大竹哲也常務役員)という発言も目立つ。セダンなどの乗用車セグメントを中心に、販売店に対するインセンティブ(販売奨励金)が急激に上昇。各社の収益を圧迫している。
マツダはインセンティブ対策に後れを取り、米国販売が伸び悩んだ。「CX-9」などのSUV系車種は順調だったものの、乗用車系が不振。丸本明副社長はその要因について、「(16年)夏以降、競合他社のインセンティブ上昇に付いていかなかった」と説明。今後は、「競合から距離を離されないように、タイムリーに施策を打っていくことが必要」と話す。
富士重も競合に合わせてインセンティブを増やすことはしてこなかったが、「金利上昇に伴う部分は上げていく」(高橋充取締役専務執行役員)。「商品を評価いただけるという手応えはある」(同)というが、経済状況や競合環境に応じて対応する必要に迫られている。
トヨタの大竹常務役員は「台数と収益のバランスを取ったオペレーションを展開したい」と強調。さらなる市場拡大や車種構成の変化が見込めないことから、需要動向や競合環境を適切に見極めた対策が収益を左右しそうだ。
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