JRダイヤ改正で市販時刻表もダイワリ改正:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
JRグループは3月4日、例年より少し早くダイヤ改正を実施した。新幹線開業など大きなトピックはなかったけれど、スピードアップや駅の廃止、路線延長など各地で動きがあった。その変化を正確に示す書物がある。市販の時刻表だ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
ダイヤ改正に合わせて、市販の時刻表も変化する。それは鉄道会社から渡される情報の反映だけではない。列車の時刻は同じだけれど、JTB時刻表、JR時刻表は「見やすさ」で競争している。ダイヤ改正は、時刻表の見やすさを工夫するチャンスでもある。
しかし、列車の運行本数が増えたから、新路線が開業したからといって、単純にページ数を増やすわけにはいかない。特にJTB時刻表とJR時刻表は、第三種郵便物の上限となる1キログラムを超えないように作られている。そのために本文のページ数を節約したり、薄くても裏写りしない紙を使ったりする。特集ページや付録にも力が入るため、時刻表はもはや重量の限界に達している。
逆に、列車や路線が減った場合はどうするか。ページ数を削減する場合と、ページ数を変更せず、行間を増やすなどで紙面を見やすくする工夫を行う場合がある。しかし、ライバルに対抗して魅力を出すために、付録や特集ページに力を入れたい。重量配分を考えると、列車の時刻を掲載するページは、「これ以上増やしたくない」「できることなら減らしたい」という存在である。ここがメインコンテンツであるにもかかわらず。
ところで、出版物の設計書を「台割(だいわり)」という。台は印刷の単位。割は割り付け(配置)だ。つまり、“JRダイヤ改正”は、市販の時刻表にとっては“ダイワリ改正”でもある。JTB時刻表とJR時刻表の改正の様子を比較すると、どちらもページ数を増やした路線もあれば、減らした路線もある。結果としては前号と同じページ数で収まった。そこにはどんな工夫があるか、詳しく見ていこう。
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