日本社会の「効率化」が結局、「人のがんばり」に落ち着く理由:スピン経済の歩き方(2/5 ページ)
「欧米に比べて、日本企業の生産性は低い」といった話をよく聞くようになった。効率化を図っている企業は多いのに、なぜ生産性は上がらないのか。その背景に、結局のところ「人のがんばり」に頼っている部分があるからではないだろうか。
「効率化」の必要を叫べば叫ぶほど弱者が倒れる
筆者のような「客」の立場からすれば、封筒2通が数十秒で受付できるのだから、封筒5通もそれくらいで作業ができると勝手に思ってしまう。しかし、実際にそこで働いている人はそう考えない。ごく当たり前のように「受領書がレシートみたいに長くなったら、お客さまにご不便をかけてしまう」とあえて電子機器を使わない。つまり、これまでの窓口業務の「常識」や「ルール」を尊重するあまり、ITによる効率化が機能しないという本末転倒な現象が起きているのだ。
かといって、効率を上げないというわけにもいかないので、書留を送りたい人間は事前に自宅なりでしっかりと宛名を記入した受領書を用意してこなくてはいけない。窓口の方も、それをもらったら目を皿のようにしてなるべく早く確認をする。
ITによる効率化が機能していないことのツケを、「利用者」や「サービス提供者」という「人」が払わなくてはいけなくなっているのだ。
この問題を端的に言い表わすとこうなる。
『これまでの「品質」や「サービス」に対する考え方を改めないまま、ITによる効率化を図っても結局のところ「人の努力」にすがるしかないので効率が悪くなる』
努力を否定するわけではないが、個々の人間がいくら血へどを吐きながら効率を上げてもどこかで必ず限界が訪れる。それは裏を返せば、「効率化」の必要を叫べば叫ぶほど弱者が倒れ、組織全体が疲弊していくので効率が下がる、という負のスパイラルに陥ってしまうことでもある。
それを象徴するのが、国の生産性をあらわす「1人当たりGDP」だ。2015年の日本は「1人当たりGDP」は世界で第27位だった。そこでさまざまな有識者から、「少子高齢化の中で成長をしていくのは生産性を上げるべきだ」という提言が出た。日本政府も重要性を説くので報道もたくさん出た。
にもかかわらず、IMFが最近発表した2016年のデータでは、さらに下がって第30位に落ち込んでいる。頑張れば頑張るほど裏目に出ているのだ。
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