日本社会の「効率化」が結局、「人のがんばり」に落ち着く理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
「欧米に比べて、日本企業の生産性は低い」といった話をよく聞くようになった。効率化を図っている企業は多いのに、なぜ生産性は上がらないのか。その背景に、結局のところ「人のがんばり」に頼っている部分があるからではないだろうか。
実は生産性はほとんど上がっていない
この皮肉な現象は、実はいま問題になっている宅配業界でも顕著にあらわれている。
効率化、効率化、とあまりにマスコミが騒ぐもんだから、宅配業界はほとんど効率化が進んでいないというイメージを抱くかもしれないが、実はこの業界はITによる効率化をそれなりに積極的に進めてきた。
今では当たり前の再配達日時を24時間受け付けられるシステムは既に1990年代からある。2000年代前半には宅配時に留守だと受取人にメールを送って再配達の指示をしてもらうサービスも開始されている。
物流ネットワークに関しても然りで、有名なヤマト運輸の物流網を支えるNEKO(New Economical Kindly Online)システムは1974年に立ち上がってから現在は、第8次NEKOシステムの実用化が進められている。
この最新システムでは、その日の配送先の偏りや過去の配送実績というビッグデータをもとにして、最短ルートを導き出してドライバーの端末に表示する。例えば、「30分後にお届けします」というメールを見て慌てて時間変更をしても現在は対応できないが、この第8次システムが導入されれば、リアルタイムで対応ができるという。
このように宅配のIT化は20年以上前から手をつけられ、いまも現在進行形で各社がブラッシュアップを続けているのだ。にもかかわらず、実は生産性はほとんど上がっていないという厳しい現実がある。
内閣府の「サービス産業の生産性」の中にある産業別のTFP(全要素生産性)の上昇率を見ると、小売業や電信・電話業という業界が1980年から2000年にかけて一貫してプラスになっているのと対照的に、道路運送業は20年マイナスが続いている。また「大和証券」の「サービス業の生産性が向上しない要因を探る(2)」というレポートによると、陸運業の1人当たり付加価値は、製造、卸売業、小売業と比べて最も低く、この10年で右肩下がりで落ち込んでいる。
そんなもんいくら効率化をしても人手不足なんだからしょうがないだろ、という声が聞こえてきそうだが、そのようになんやかんやいっても結局のところ「人」へ解決策を求めてしまうという日本社会の風潮が、効率化が進まぬ「元凶」ではないのかと思っている。
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