日本社会の「効率化」が結局、「人のがんばり」に落ち着く理由:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
「欧米に比べて、日本企業の生産性は低い」といった話をよく聞くようになった。効率化を図っている企業は多いのに、なぜ生産性は上がらないのか。その背景に、結局のところ「人のがんばり」に頼っている部分があるからではないだろうか。
「人のがんばり」に頼るという悪循環
なにかとつけて「人」に解決策を求めてきたというのは宅配業界の価格が象徴している。
27年前の社会と今の社会で「価値」が激変しているというのに、クロネコヤマトの宅配料金は据え置きだった。環境の変化を「人のがんばり」で補っていたのだ。このような「昭和の宅急便」の「常識」や「ルール」をひきずっている人々が、先端技術で効率化をすることができるだろうか。できるわけがない、と筆者は考える。
例えば、ドローンを使って効率化をするにしても、「昭和の宅配便」のカルチャーのままならば、今度は単にドローン担当者たちが「ドローン操縦地獄」に陥るだけだ。宅配ボックスを街中に完備したら再配達はなくなるかもしれないが、逆に早朝でも深夜でも配送ができるということで、「24時間宅配ボックスめぐり」を強いられるドライバーも現われるかもしれない。
誤解なきように断っておくが、決してこれらの効率化への取り組みを否定しているわけではない。これまで何もしてこなかったわけではなく、むしろそれなりに効率化を目指してきてもこの現状だということを踏まえると、いくら画期的な対策をもってきても、宅配ビジネスそのものの考え方を改めない限りは、実効性の乏しいものとなり、結局のところ「人のがんばり」に落ち着きがちだ、ということが言いたいのだ。
事実、こうしているいまも「人のがんばり」を求める声が出てきている。宅配業界の効率化議論の中には、再配達を指定しない利用者はけしからんからモラルを上げろ、という声や、配達する人が不満タラタラだし、人手不足だからとにかく賃金を上げろという声も少なくない。
「人のがんばり」を信じてなにが悪い、みんなで力を合わせればどんな逆境も克服できるはずだ、と思う方もいるかもしれない。しかし、大きな変化を前にして自分たちの発想を変えることなく、「人のがんばり」で乗り越えようとしても、残念な結果しか生まないということは歴史が証明している。
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