伊豆戦争が再び? 東急VS.西武の争いはそれほど悪くない:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
東急グループの伊豆急行で新たな観光列車が誕生する。かつて伊豆や下田などをめぐって、東急グループと西武グループが争っていたが、今度の戦いはちょっと様子が違う。両社の沿線の人々にとって楽しみが増えて、両社の沿線の価値を上げる効果が大きい。
「THE ROYAL EXPRESS」は小さな「ななつ星」
「THE ROYAL EXPRESS」は富裕層向けを意識したデザインで、車体はイギリス王室の公式色ロイヤルブルーをイメージした深い青のほかに、さりげなく金色のラインを配した。客室はゆったりした2人向かい合わせ、4人向かい合わせを中心に、一部は海に向いたペアシートを備える。
4両編成の「IZU CRAILE」に対して、こちらは8両編成となっていてゆとりがある。4号車は厨房、5号車と6号車は食堂車、3号車は多目的スペースとなった。演出には音楽を積極的に取り入れていて、テーマ曲の作曲はバイオリニストの大迫淳英氏。「ななつ星in九州」の音楽演出を担当し、現在も「ななつ星in九州」の演奏乗務員として活動されている。列車のデザインも「ななつ星in九州」の水戸岡鋭治氏だ。「THE ROYAL EXPRESS」は「伊豆急行版ななつ星」と言ってしまうと分かりやすそうだけど、伊豆急行、九州のどちらにも失礼だろう。
料金体系は未発表ながら、100席のうち30席は“クルーズプラン”として、企画旅行枠の販売となる。往路は横浜から伊豆急下田まで乗車して約3時間の列車旅。伊豆では高級旅館・ホテルの貴賓室・スイートルームに宿泊。帰路は伊豆急下田駅から伊東駅まで乗車し、スーパービュー踊り子など別の列車に乗り換えて横浜に戻る。伊豆観光を続けたい乗客にも配慮した構成だ。料金は宿泊先などで異なり、1泊2日で10万円台だという。
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