なにわ筋線に阪急電鉄参加、各社への波紋:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/5 ページ)
“なにわ筋線”構想に新たな展開だ。阪急電鉄が参入を表明し、直通運転を見込んで十三から北梅田へ新線を建設したいという。その構想の先には、宿願の新大阪駅延伸がある。一方、中之島線を持て余す京阪電鉄にも商機が見えた。
阪急電鉄の参画には理由がある
2017年1月、大阪市長は定例会見で「なにわ筋線についてはJRと南海電鉄が最終調整に入っている」と報告した。開業目標年度は2030年ごろの見通しという。これでいよいよ最終決定し、着工に進むかと思われた。
ところが、ここで5番目の当事者が現れた。阪急電鉄だ。3月中旬の報道によると、阪急電鉄からもなにわ筋線に乗り入れる構想が提案されたようだ。ここからは報道の内容が微妙に違っている。最初に報じた読売新聞は16日夕刊で「阪急電鉄を加えた5者で同意」、共同通信は16日電子版で「4者が阪急電鉄の構想を盛り込んで大筋合意」、朝日新聞は17日電子版の詳報で「4者の大筋合意について大阪市が阪急電鉄の構想を検討したい考え」だ。
どの報道でも、これから最終調整となっている。阪急電鉄の参画はまだ決定ではない。阪急電鉄は軌間が新幹線と同じ1435ミリメートルだけど、JR在来線、南海線と同じ1067ミリメートルで建設するという。それでは阪急電鉄の既存路線と直通できない。それでも阪急電鉄は利点ありと判断し、4者、とくに大阪市は受け入れる可能性が強い。そこには2つの理由がある。
1つは、阪急電鉄が元々、十三(じゅうそう)と北梅田を結ぶ“なにわ筋連絡線”構想を持っていたからだ。この構想は後に地下鉄四つ橋線と相互直通運転する路線計画“西梅田・十三連絡線”となり、大阪市と協議した経緯がある。阪急電鉄としては、大阪市が四つ橋線の協議をないがしろにして、阪急電鉄抜きのなにわ筋線を進ちょくさせている状況は納得しがたいだろう。本来は“なにわ筋連絡線”構想もあったのだから。
もう1つは、なにわ筋線の推進は、4者だけの成果ではなく、阪急電鉄も後押しした経緯があるからだ。2009年4月に近畿運輸局において「関西活性化に向けた今後の鉄道ネットワークのあり方に関する懇談会」が開催され、大阪府、大阪市、関西経済連合会のほか、関西国際空港会社、JR西日本、南海電鉄、阪急電鉄、京阪電鉄、近畿日本鉄道、阪神電鉄の幹部が列席し、なにわ筋線は必要だと確認した。これが国に支援を要請する後押しになっている。なにわ筋線は関西全体で推し進める路線である。
関連記事
- 2018年「大阪メトロ」誕生へ、東京メトロの成功例を実現できるか
2006年から検討されていた大阪市の地下鉄事業民営化について、ようやく実現のめどが立った。大阪市営地下鉄は2003年度に黒字転換し、2010年に累積欠損金を解消した優良事業だ。利益を生む事業なら市営のままでも良さそうだ。大阪市が民営化を目指した理由とは……? - 「なにわ筋線」の開通で特急「ラピート」と「はるか」が統合される?
JR大阪駅周辺の新線計画が進ちょくしている。大阪駅の北側に北梅田駅(仮称)を作り、新大阪駅発着の特急を停車させる。さらにJR難波と南海難波新駅を結ぶ「なにわ筋線」構想が絡む。おおさか東線の新大阪駅延伸も組み合わせると、新たな環状ルートができる。 - 羽田空港を便利にする「たった200メートル」の延長線計画
国土交通大臣の諮問機関「交通政策審議会」が、2030年を見据えた東京圏の鉄道計画をまとめた。過去の「運輸政策審議会答申18号」をほぼ踏襲しているとはいえ、新しい計画も盛り込まれた。その中に、思わずニヤリとする項目を見つけた。 - 鉄道物流から考える豊洲市場移転問題
東京・築地市場の豊洲移転問題が取りざたされている。豊洲新市場の土壌汚染の疑いや設計手順、築地市場の老朽化とアスベスト問題が争点になっているようだ。ここでは、物流面から市場移転問題を考えてみたい。もしかしたら、豊洲新市場は近い将来に役目が変わるかもしれない。 - 「乗客がいない列車を減らす」は正解か?
青春18きっぷの利用開始日になったこともあって、中国山地のローカル線に乗ってきた。運行本数が少なく旅程作りに難儀し、乗ってみれば私一人という列車もあった。一方、快速列車で健闘する路線もある。不人気の列車の共通点は、遅さと運行時間帯だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.