なにわ筋線に阪急電鉄参加、各社への波紋:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
“なにわ筋線”構想に新たな展開だ。阪急電鉄が参入を表明し、直通運転を見込んで十三から北梅田へ新線を建設したいという。その構想の先には、宿願の新大阪駅延伸がある。一方、中之島線を持て余す京阪電鉄にも商機が見えた。
阪急電鉄の2つの構想
西梅田・十三連絡線は前述のように、元々はなにわ筋連絡線として構想されていた。区間は十三〜北梅田間で、運輸政策審議会答申10号に記載された。なにわ筋線は「2005年までに整備が望ましい」、なにわ筋連絡線は「2005年までに整備着手が望ましい」という文言で、序列としてはなにわ筋線が優先されているけれども、元来は一体となる路線だった。
しかし、2004年に大阪市が地下鉄四つ橋線と阪急神戸本線との直通運転を構想し、報道される。四つ橋線の業績が思わしくなかったという事情もある。四つ橋で都心へ向かう人々は、西梅田という街外れを嫌って、大国町で御堂筋線に乗り換えてしまうからだ。
ただし、この案には問題があった。阪急神戸本線と四つ橋線は電化方式、電圧が異なるからだ。電圧は回路の改造で間に合わせるとして、阪急電鉄は架線集電、四つ橋線は第三軌条方式である。四つ橋線のトンネルは低い。軌間は同じだから、両方の電化方式に対応させた車両を作る必要がある。四つ橋線車両の屋根をさらに低くし、パンタグラフを載せなくてはいけない。
それでも近畿地方交通審議会答申第8号では大阪市の意向を汲み、「地下鉄四つ橋線延伸(西梅田〜北梅田〜十三)」と掲載され、直通運転案が残された。当事者の協議の結果、西梅田・十三連絡線とし、2006年に鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設し、阪急電鉄と大阪市が運行するとまとまった。2008年には国土交通省より事業性を認められた。
阪急電鉄にはもう1つの路線計画があった。“阪急新大阪連絡線”だ。事業免許は1961年に取得しており、西梅田・十三連絡線、なにわ筋線よりずっと古い。なにしろ東海道新幹線計画と絡めた計画で、東海道新幹線建設中に事業免許を取得している。路線は2つあった。1つは阪急京都本線淡路駅から新大阪駅を経由して、阪急宝塚本線と合流して十三に至るルート。もう1つは、新大阪から阪急宝塚線の直前で分岐し、阪急神戸本線に合流して神崎川に至るルートだ。
阪急新大阪連絡線もなにわ筋連絡線と同じく、運輸政策審議会答申10号に「2005年までに整備着手が望ましい」と記載された。阪急電鉄は新大阪駅北側に用地を確保し、地下鉄御堂筋線の屋根上には、阪急電鉄のための橋脚も作られていた。しかし、阪急電鉄は2003年に淡路〜新大阪、新大阪〜神崎川間の免許廃止を届け出る。路線建設に着手できず、塩漬けにした土地を売却、または、自社の関連会社を建てた。JR東海が新大阪駅を北側へ拡張したいと申し出たときも応じた。それが新大阪駅27番線ホームだ。
ただし、阪急電鉄は新大阪〜十三間の免許は維持している。2006年には西梅田・十三連絡線と同時に開通させたいという意向を示した。この段階で、西梅田・十三連絡線の阪神神戸本線直通案より、阪急新大阪連絡線との一体整備の構想が出てきた。阪急電鉄の既存の路線と直通せず、地下鉄四つ橋線と直通すると考えるなら、地下鉄四つ橋線の規格で建設すれば良い。新大阪駅だって地下でもいい。残された地上部分はターミナルビル用地として使える。
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