デジタル化で“生き生き”接客 町のクルマ屋さんの事例:目的の共有がカギ(3/3 ページ)
デジタルテクノロジーをうまく使いこなせば、業務を効率化し、サービスを向上させることができる。しかし、導入しただけで全てがうまくいくわけではない。大切なのは、明確な目的と、その目的を会社全体に浸透させることだ。埼玉県で自動車整備などを手掛ける杉戸自動車の場合は……。
笑顔があふれる店に
杉戸自動車の課題やニーズを聞きながらシステム導入を提案しているのが、ブロードリーフの鈴木有輔さん。「泰楽社長のすごいところは、社員と目的を共有していることと、コミュニケーションを取れる雰囲気をつくっていること」と話す。
そんな泰楽社長も、会社を引き継いだ当初から今の経営スタイルだったわけではない。7年ほど前までは、「売り上げを中心とした考え方で、数字と効率ばかり追っていた」という。社員に対して、罵声を浴びせることも珍しくなかった。
そのやり方でしばらくは売り上げが増えていったが、すぐに伸び悩んだ。他の経営者に愚痴をこぼしたところ、「勉強不足だ」と怒られたという。それをきっかけに「生き方から見つめ直した」。全てを独断で決めていた方法を変え、自分が感じている問題意識から社員と共有し、議論するようになった。話し方も穏やかになったため、「社長、おかしくなった?」と、逆に距離を置かれたことも。「(変わった自分を)受け入れてもらうのに3年かかった」という。
経営スタイルを変えた効果は、伸び悩んでいた売り上げにも表れた。社員との関係も変わった。構えすぎず、自然体で接することで、何でも言い合える関係を築いている。「社員に少しばかにされるぐらいがちょうどいいんですよ」と笑顔を見せる。
目指す姿は「日本一、笑顔があふれるお店」。みんなが笑顔でいられる会社を目標として掲げることで、「サービスがどうあるべきか」が明確になる。そして、そのための取り組みも定まってくる。必要なツールを取捨選択して、自社に最も適したシステム運用を実践している。
泰楽社長は「クルマ屋さんとして、できる限りのサービスを提供していく。地域の方が困ったときに頼る場所として、一番手になれるようなお付き合いをしていきたい」と展望を思い描く。
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