ジャーナリストの執拗な質問に、なぜ大臣は“切れて”しまったのか:スピン経済の歩き方(4/5 ページ)
フリージャーナリストの執拗な質問を受け、今村復興大臣の堪忍袋の緒が切れてしまった。ジャーナリストの追及に賞賛する声がある一方で、否定的な見方をする人も多い。筆者の窪田氏の意見は……。
大臣の「自業自得」
だったら、あの潮目を変えた「帰れない人はどうするのか?」という質問に対してどう答えればよかったのさ、あんな執拗な誘導尋問を乗り切るのは難しいぞ、と怒る人もいるかもしれないが、今村大臣は謝罪後の7日の会見でこのように述べている。
(答)この件については、帰還されない方がどういう理由で、あるいはどういうことの状況で帰還されないのかということの原因を、そういったものをよく分析をしながら、では、どういうところが足りないのかといったことについては、しっかりそこを把握して、今後の対策を立てるときの参考にしていきたいというふうに思っています。
ジャーナリスト氏にどんなに執拗につめられても、この「当たり障りのない答え」でやりすごしていれば、少なくとも今のような辞任要求までされていないだろう。恐らく、自主避難者に関する質問に対しても、復興庁の職員たちはしっかりとした「想定問答集」をつくっていたはず。本来であれば、大臣もそれに基づいた回答をしていれば、これほど大きな騒ぎにならなかったはずだ。
しかし、フリージャーナリストの方の議論に乗せられるあまり、その「想定問答集」を逸脱した回答を大臣がしてしまったのであろう。
なぜそのようなことを言うのかというと、報道対策の手伝いをしていると、ちょいちょいこういう場面に出くわすからだ。広報や事務方が模範回答をしっかりとつくる。しかし、今回のフリージャーナリスト氏のように執拗な質問をする記者などと白熱した議論をするうちに、頭からスコーンと抜けて、ついつい自分の本音を語ってしまう。大臣や社長という「公人」としての立場を忘れて、個人的に目の前にいる人間を説き伏せることに夢中になってしまうのだ。
筆者の経験では、このように暴走してしまうスポークスパーソンは往々にして「喋りに自信のある人」が多い。議論になると相手を「論破」するほど弁がたつ経営者、常に支援者や有権者の前で気のきいたスピーチをしているような政治家などに限って、責任を追及されるなど劣勢に立たされると、得意のトーク力で乗り切ろうとして墓穴を掘る。ボキャブラリーの豊富さが仇(あだ)となって「失言」を生む。
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