マヨネーズで食卓を彩る キユーピー研究者の工夫:新しい価値を提案(2/2 ページ)
ロングセラー商品「キユーピーマヨネーズ」。研究開発を担当する若見俊介さんは、マヨネーズの新商品や新しい使い方の開発に取り組んでいる。マヨネーズにかける思いや研究開発の工夫を聞いた。
意外なレシピを開発
若見さんがチームで取り組む課題の1つが、“万能調味料”であるマヨネーズの新しい使い方を提案し、消費を促すことだ。今では、サラダにかけるだけでなく、さまざまな用途の使い方が増えているという。Webサイトを通じてマヨネーズを使った料理のレシピを紹介。料理のおいしさや食感を向上させるマヨネーズの効果を検証し、学会発表も行っている。
16年に公開したプリンのレシピは、反響が大きかった。生クリームの代わりにマヨネーズをプリン液に加えるレシピだ。しっとりとした、滑らかな食感に仕上がる。従来、「料理にマヨネーズを追加しておいしくする」という考え方のレシピが多かったが、最近は「他の調味料をマヨネーズに置き換える」提案を増やしている。プリンはその一環だ。「生クリームを入れた方がおいしいけど、買うと余ってしまう」という悩みに対応することを想定した。
意外性のあるレシピに、当初は社内でも賛否両論があった。認めてもらうには、マヨネーズの効果をしっかりと証明しなければならない。若見さんは「生クリームをマヨネーズで代替できるだけではだめ。マヨネーズを入れて良くならないといけない」と話す。本当においしくなるのか、また、どの程度入れれば最も効果が出るのか、研究を重ねた。
プリンが柔らかく滑らかになる理由は、マヨネーズに含まれる植物油や酢にある。プリン液に入れる卵のタンパク質は加熱で固まるが、マヨネーズの油や酢がその結合を緩やかにし、ふんわりと固まる。しかし、マヨネーズの量が多すぎると、風味が残ってしまう。「マヨネーズの量のバランスに悩んだ。(食べる人が)最も喜んでくれる味と食感について、チームで議論を重ねた」という。
マヨネーズの量をプリン液の2〜6%の間で変化させ、プリンの硬さやマヨネーズの風味を計測。適切な量を絞り込んでいった。実際に食べてもらう官能評価も重ねた。最終的に、プリン液の4%に当たる量を入れるとバランスの良い味と食感になることを証明した。
研究開発のプロジェクトは、それぞれ期間が長く、地道に試験を重ねる仕事が多い。途中で目的を見失わないためにも、「何のために必要なのか」をしっかりとチームで共有するようにしている。また、日ごろからチームメンバーをはじめ、他の部署の人とも会話し、新しい切り口を探している。
家庭料理のバリエーションが増えると、食事が楽しくなる。若見さんはそんな風景を思い描きながら、日々マヨネーズと向き合っている。「マヨネーズで“幸せな食卓”に貢献できることは、ありがたい」。これからも、伝統を守りながら新しい提案を続けることで、マヨネーズの価値を分かりやすく伝えていく。
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