セブンの「ロイヤリティ引き下げ」が意味するもの:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
セブン−イレブンが、これまで「聖域」としてきたフランチャイズ(FC)加盟店のロイヤリティ引き下げを表明。コンビニにとって核心部分であるロイヤリティの見直しを実施しなければならないほど、セブンは追い込まれつつあるのかもしれない。
コンビニのロイヤリティはかなり高額
加盟店とセブンの契約条件は、店舗の開設に必要な土地や建物をどちらの負担で用意するのかによって変わってくる。多くをオーナー側が用意するパターン(もともと酒屋など自らの土地で小売店を経営していたオーナーはこの形態を選択することが多い)では、粗利益の43%をセブンに支払うことになる(ローソンやファミリーマートは30%台)。例えば、1000円の商品を700円で仕入れて300円の粗利益を得たとする。ロイヤリティはここにかかってくるので、この場合には300円の43%、つまり129円をセブン側に支払うことになる。
もし脱サラなどでコンビニの加盟店になるケースでは、加盟店オーナーが多額の資金を用意できないケースも多い。その場合にはセブン側が資金の多くを負担する代わりに、ロイヤリティの割合が上がってくる。売上高などによってロイヤリティの率は変わってくるが、粗利益の70%以上を本部に支払う契約もあるといわれている。
一連のロイヤリティは一般的に考えるとかなり高額である(例えば、飲食業界などは10%前後が多い)。仮に1日の売上高が50万円だとすると、1カ月の売上高は1500万円。仕入原価を70%と仮定すれば、1カ月の粗利益は450万円だ。ここで70%のロイヤリティが課せられしまうと加盟店オーナーが得られる利益は135万円に減ってしまう。
加盟店オーナーはここから自身の給料やアルバイトの給料、その他経費などを支払うことになるので、場合によっては利益がほとんど残らないこともある(セブンの場合には光熱費の一部を本部が負担するという制度がある)。
以前、一部の加盟店オーナーが本部との契約条件があまりにも厳し過ぎるとして労働委員会に救済を申し立てるという事例があった。全ての加盟店がそうではないと思うが、店によってはロイヤリティの負担はかなり重いものとなっているのだろう。
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