鉄道路線廃止問題、前向きなバス選択もアリ:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
赤字ローカル線の廃止論議で聞く言葉に「バスでは地域が衰退する」「バスは不便」「鉄道の幹線に直通できない」などがある。鉄道好きとしては大いに頷きたいところだ。しかし、ふと思った。バスの運行に携わっている人々は、これらの声に心を痛めていないだろうか。
「便利」と「楽しい」を周知させよう
バスの便利は理屈で理解できる。後は周知の問題だ。インターネットがその助けになる。沿岸バスの場合、公式サイトで路線図、時刻、料金などの情報のほかに、「バスの乗り方」というページがあり、どの路線を参照してもリンクが表示されている。
SNSの活用も積極的だ。Facebookではおトクなきっぷ、都市間バスの空席情報、停留所の改廃などを発信、Twitterではリアルタイムの運行情報を提供している。「○○停留所でお客さまの乗降に時間がかかり、数分遅れています」などだ。停留所の看板では得にくい、リアルタイムな情報を手元で確認できる。これは旅行者にとって、不慣れな土地で心強く感じる。乗り換え検索サイトへの働きかけも早くから行われていた。この動きは他のバス事業者にも広がっている。沿岸バスによると、高齢者もスマートホンを使いこなしてバスに乗っているそうだ。大都市でも、乗り換え検索で身近な停留所やバスの時刻が分かるようになった。
「おもしろさ」の部分は、取り組みが始まったばかりだ。鉄道もバスも、公共交通機関であり、便利で十分だ。おもしろさはいらない。しかし、地方の交通機関としては「観光の足」という要素も重要だ。沿岸バスはこの部分でも先んじていると思う。公式サイトを見ると、女の子のイラストがたくさんある。経由地の留萌の萌の字にちなんで、萌えっ子と呼ばれている。アニメのサイトのように見えるけれど、必要な情報を網羅しているし、説明の要所に写真を添えている。情報量も多く、分かりやすい。
萌えっ子はバスの車体にも描かれ、萌えっ子フリーきっぷの図柄になっている。2009年に初めて採用されたときは、ネットでかなり話題になった。その後も新しいキャラクターを登場させて、そのたびに話題になる。
萌えっ子フリーきっぷは豊富留萌線(豊富〜羽幌〜留萌)や留萌別苅線(留萌〜増毛)など、指定された路線が乗り放題となる広域周遊きっぷだ。羽幌沿海フェリー、離島の定期観光バスの割引特典もある。青春18きっぷの沿岸バス版というコンセプトだという。1日券(2370円)と2日券(連続2日有効 3290円)、ワイド2日券(3日間のうち、中日を除く2日有効 3290円)がある。豊富〜羽幌〜留萌の片道運賃は2780円だから、1日券の方が安い。
私にとっては、このようなキャラクターに関心は薄い。しかし、萌えっ子の話題は沿岸バスの名前、営業地域などを知るきっかけになった。北海道で頑張っているバス事業者、といえば沿岸バスを最初に思い付く。
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