集英社、講談社、小学館のデジタルマンガ戦略とは?:出版不況打破のカギ(3/3 ページ)
出版不況が続く中で、重要性が高まり成長している電子書籍市場。特に伸びが著しいのはマンガだ。集英社、講談社、小学館といった大手出版社は、デジタルマンガを売るためにどのような戦略を立てているのだろうか?
デジタルでヒット作を作るために
過去の作品を掘り起こす取り組みが功を奏している一方で、「描き下ろし」の流れも生まれている。
「小学館はもともと『デジタル上でどうやってヒット作を作っていくか?』を考えている。ガラケー時代に成功したのは『モバMAN』。雑誌形式で電子マンガを描き下ろすレーベルで、『ノ・ゾ・キ・ア・ナ』(本名ワコウ)は大ヒット作品になった。今は200ページを200円で配信するデジタル描き下ろし雑誌の『モバフラ』が好調で、多くの電子書籍ストアで1位を獲得している」(小学館の飯田氏)
「毎日1話無料」などの仕組みがある電子書籍ストアやアプリには、定期的に集まるユーザーが存在している。“定期購読”を習慣化できれば、電子雑誌の媒体としての存在感が強まり、ヒットの土壌となる――というわけだ。
「描き下ろしの雑誌やアプリ展開など、ヒットの方程式にはさまざまな手がある。デジタルが紙に近づいたのがここ10年のこと。これからは近づきつつも、紙とは違う売れ線が出てくる10年になるはず」(小学館の飯田氏)
「デジタル向けに強い、新しい才能を発掘したい。今夏、LINEとともに少女漫画の新人大賞を実施する予定。ここで面白い作家が出てくれば、これまで集英社が出してこなかったレディコミジャンルの展開や、デジタルファーストのモデルが生まれるかもしれない」(集英社の鈴木氏)
出版不況が続く中、起死回生の一打となる可能性を持つデジタルコミック市場。これからの各出版社の動向に注目が集まる。
関連記事
- なぜ電子出版は軽視されるのか
不調が続く出版業界の中で、唯一成長している電子出版市場。出版社が電子に注力する価値はありそうに見えるが、実際は業界内の電子への期待はまだまだ薄い。「売れない紙を大事にして、売れ始めている電子を軽視する」のはどうしてなのだろうか。 - マンガアプリ利用者数、首位は「LINEマンガ」
ニールセンデジタルがマンガアプリの利用状況を発表。2017年2月時点の月間利用者数1位は「LINEマンガ」の279万人だった。月間利用回数と1回あたりの利用時間もトップに。 - 「一迅社の力を借りてオタクマーケットに参入したい」 講談社が一迅社子会社化 両社トップが語るその狙い
講談社が一迅社の全株式を取得し、完全子会社化することで合意した。両者トップが語る、子会社化の経緯と狙いとは? - “出版不況の中でも売れる本”を生み出す「ウェブ小説」の仕組みとは?
出版不況の中でも、毎年ベストセラーは生まれている。映画化もされた川村元気『世界から猫が消えたなら』は累計100万部、又吉直樹の次に売れている新人作家・住野よるの『君の膵臓をたべたい』は累計55万部を突破した。「出版不況でも売れる本」に隠された「ウェブ小説」の秘密とは? - 講談社、マイ電子書店スマホで開設「じぶん書店」4月開始
講談社は、自分の電子書店をスマートフォンで簡単に開ける新プラットフォーム「じぶん書店」を4月からサービス開始。電子書籍約3万2000点の中から好きにタイトルを選び、自分の書店のように売り出せる。運営は電子出版取り次ぎメディアドゥと共同。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.