提訴がダメなら「くら寿司」はどうすればよかったか:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
ネット掲示板に「何が無添なのか書かれていない」などと書き込みをした人物の個人情報開示をめぐる訴訟に敗れた「くらコーポレション」に対して、厳しい言葉が投げかけられている。では、どうすればよかったのか。
「発表している内容が全てです」と回答
日本マクドナルドをつくった藤田田氏は、「ライバルは大阪の回転寿司チェーン」(飲食店経営 2001年11月号)と述べて、1977年に創業して成長を続けてきた「くらコーポレション」を評価していたという。
確かに、添加物はさておき、寿司キャップ「鮮度くん」やICタグでの品質管理など「くら寿司」はその際立った先進性で業界をリードしてきた。ファストフードやファミレスと肩を並べるようにした功労者であることは疑いようがない。
だったら、回転寿司で初めて「消費者に徹底的に情報を開示する」という先進的な取り組みをしてみてもいいのではないだろうか。
確かに毅然とした態度で守られる「名誉」もあるが、「ライバル」のマクドナルドのように愚直なまでに消費者に情報をさらけ出すことで生まれる「信頼」もあるのだ。
今回の騒動を受けてJ-CASTニュースの取材に対して、「くらコーポレーション」は「発表している内容が全てです」と回答した。しかし、本当にその「内容」で消費者の共感が得られるのか、伝えようという努力をしているのか、を考えてみてはいかがだろうか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
関連記事
- なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
街中を歩いていて、おじさんが「責任者を出せ!」と騒いでいるのを聞いたことはないだろうか。例えば、駅員に大声を出したり、コンビニの店員を叱ったり、とにかく日本のおじさんはよく怒っている。なぜおじさんは「責任者を呼べ!」と叫ぶのか、その背景を調べてみると……。 - なぜ研修にチカラを入れている会社は、パッとしないのか
上司から「研修があるから受けてきてね」と言われたことがある人もいるはず。ビジネスシーンでよくある光景だが、グーグルで人材開発を担当してきたピョートルさんに言わせると、こうした会社は「イケていない可能性がある」という。なぜかというと……。 - 日本社会の「効率化」が結局、「人のがんばり」に落ち着く理由
「欧米に比べて、日本企業の生産性は低い」といった話をよく聞くようになった。効率化を図っている企業は多いのに、なぜ生産性は上がらないのか。その背景に、結局のところ「人のがんばり」に頼っている部分があるからではないだろうか。 - だから「クォーターパウンダー」は撤退に追い込まれた
4月4日にマクドナルドの「クォーターパウンダー」が終了する。「マックの顔」ともいうべきブランドなのに、なぜ同社は撤退の決断を下したのか。その背景には……。 - だから日本経済の生産性は「めっちゃ低い」
日本の1人の当たりのGDPが低い。「生産性が低い。もっと高めよう」といった話をすると、「日本人はチームプレーが得意なので1人当たりのGDPなど意味がない」といった反論も。なぜ科学的根拠のない意見が飛んでくるのか。その背景には、戦前からある「戦争学」が影響していて……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.