提訴がダメなら「くら寿司」はどうすればよかったか:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
ネット掲示板に「何が無添なのか書かれていない」などと書き込みをした人物の個人情報開示をめぐる訴訟に敗れた「くらコーポレション」に対して、厳しい言葉が投げかけられている。では、どうすればよかったのか。
「くらコーポレーション」の説明が足りない
ネット上には長きにわたって名誉を損なうような「噂」が囁(ささや)かれているにもかかわらず、異物混入騒動が大きく報じられたにもかかわらず、それでもマクドナルドに幼い子どもを連れたお母さんや、家族連れが多く押しかけているのは、「風評」を上回るほどの量で、積極的に消費者の不安を払拭するための情報発信を行なっていることも大きいのだ。
それを踏まえて、「くら寿司」を見てみるとどうか。確かに、原材料や原産地、アレルゲン情報をWebサイトで公開している。が、それは今日び多くの食に関わる企業が実践しているわりとスタンダードな取り組みである。一方で、「くらコーポレーション」が「創業以来、長年、最も大事にして取り組んできた四大添加物の不使用」については以下の説明のみである。
『くら寿司では、全ての食材において、化学調味料・人工甘味料・合成着色料・人工保存料を一切使用していません。それはお客様の健康を最優先したいという、私たちの基本思想です。実現までに長くの歳月と多くの投資、そして不屈の精神があって、他社が追随できない四大添加物排除を実現しました。くら寿司の食材は、すべて「安全・安心」からできています』(Webサイトより)
企業側の「思い」は痛いほど伝わってくるが、これが消費者への「積極的な情報発信」になっているかというと正直、疑問である。「多くの投資」や「不屈の精神」などのふわっとした言葉だけで、どのように四大添加物を排除しているのか、そして他の添加物についてはどうなのかという消費者の素朴な疑問に答えていないからだ。
「マクドナルドのまるごとQ&A」が都市伝説のようなものや原料にいたるまで100をゆうに超える消費者の疑問に答えているということと比較すると、どうしても言葉足らずのような気がする。
もっと言えば、「ここまで一生懸命頑張ってきた我々は信頼できるでしょ?」という精神論的な押し付けがましさを感じてしまう。
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