閑散としていた「競輪場」に、なぜ人が集まってきたのか:水曜インタビュー劇場(ムダ公演)(4/5 ページ)
バブル崩壊後、公営レースは「氷河期」が続いていた。売上減が続いていたが、ここ数年、反転しつつある。レース場といえば、ゴミが落ちている、トイレが汚い、高齢者が多い、といったイメージがあるが、なぜ売り上げが伸びつつあるのか。その理由は……。
ムダを徹底的に見直す
渡辺: そこは、とても苦労しました。これまで「笑ってはいけない」「声をかけてはいけない」と言われてきて、ずっと守ってきた。それなのに、明日から「さあ笑ってください」「お客さんにどんどん声をかけてください」と言われても、すぐにできません。実際に、ゴミが落ちていても「お客さんの近くで掃除をしたら怒られるかもしれない。怖くて、取りに行くことができない」という人もいました。
そうした人たちには、まずは私も含めて男性陣が先頭に立って、掃除をして回りました。その姿を見て、「大丈夫なのか」と思っていただき、少しずつ従来の考え方を改めてもらいました。このほかに、研修を行うなどして、少しずつ新しい仕事の形を学んでもらいました。
土肥: 非効率な部分ってまだまだありそうですね。
渡辺: たくさんありました。例えば、バス。運行状況を調べてみると、かなり頻繁に走行しているんですよね。どうしてかなあと思って調べてみると、売り上げがよかったころの状況のままだったんですよね。つまり、お客さんの数が多かったころの状況に応じて、バスを運行していました。このほかにも、同じようなケースがありました。例えば、景気が良かったころと比べてお客さんの数は減っているのに、警備の数はそのままだったり、売り場の数もそのままだったり。
お客さんの数に応じて、バスの運行数を減らし、警備員を減らし、売り場の数を減らすことで、ムダな経費を削減することができました。このような話をすると、どんどん縮小しているだけじゃないかと思われるかもしれませんが、そうではありません。不要なところは人を減らし、必要なところに人を増やしました。例えば、車券を売る人は売るだけでなく、屋台をつくって飲食に関係する仕事をしてもらったり、園芸コーナーをつくってお花に関係する仕事をしてもらったり。
また、施設の改修にもチカラを入れました。家族で来ても楽しめるようなスペースを設置したり、地元住民向けのイベントを開催したり。ギャンブルだけでなく、スポーツを楽しんでもらうように工夫をしていきました。
土肥: 例えば?
渡辺: 選手が来場者を出迎えたり、走路の内側でレースを観戦できるようにしたり、地元の名産品を販売したり。レースがない日には一般の人に開放して、競輪場になじみがなかった人に足を運んでもらいました。
土肥: 横浜DeNAベイスターズの本拠地「横浜スタジアム」でも試合のない時間帯に、一般の人を開放していますよね。これまで球場、レース場といえば、高い壁があって、中を見ることができない。興味がない人にとっては、大きな箱であって、そこで楽しむことができないんですよ。そうした人にも楽しんでもらうために、施設を開放することはいいことですよね。中で、お弁当を食べてもらうだけでも、印象は大きく変わりますから。
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