閑散としていた「競輪場」に、なぜ人が集まってきたのか:水曜インタビュー劇場(ムダ公演)(3/5 ページ)
バブル崩壊後、公営レースは「氷河期」が続いていた。売上減が続いていたが、ここ数年、反転しつつある。レース場といえば、ゴミが落ちている、トイレが汚い、高齢者が多い、といったイメージがあるが、なぜ売り上げが伸びつつあるのか。その理由は……。
ムダが多いことが明らかに
渡辺: 業務を精査したところ、非常にムダが多いことが分かってきました。警備、清掃、発券、広告などの業者があるのですが、その組織が縦割りなんですよね。例えば、警備員の足元にゴミがころがっていたら、その人は何をすると思いますか?
土肥: ゴミをひろいますよね。
渡辺: ひろわないんですよ。組織が縦割りになっているので「自分は警備をする人、だからゴミはひろいません」といったスタンスなんですよね。
土肥: えっ、ということは……。
渡辺: 売り場の人は売るだけ、案内する人は案内するだけ、清掃する人は清掃するだけ……といった感じ。清掃する人も清掃時間が決まっていて、ゴミがたくさん散らかっていても、その時間になるまで清掃しない。もちろんすべての人がそのような対応をしているわけではありませんが、非効率に業務を行っている部分がたくさんありました。
あと、スタッフは笑わないですし、お客さんに声もかけない。どうしてかなあと思って調べたところ、「笑ってはいけません」「お客さんに声をかけてはいけません」といったルールがあったんですよ。
土肥: ちょ、ちょっと信じられません。遊園地などでは「笑顔を絶やさずに」「お客さんに声をかけましょう」といった感じで、コミュニケーションをとても大切にしているのに、公営レース場では真逆のことをやっていたということですか? なぜ、そんなルールがあるのでしょうか?
渡辺: 分かりません。想像の話になりますが、レース場には勝った人もいれば負けた人もいる。負けて機嫌が悪いときに、スタッフが笑顔で声をかければ怒られるかもしれない。だから、「笑顔はダメ」「声をかけてもダメ」といったルールができたのかもしれません。
あと、お客さんを監視していたのかもしれません。レース場でスリをしている人はいないか、窓口でお金を奪う人はいないか、ケンカをする人はいないか、といった感じで見張っていたのかもしれません。いずれにせよ、「自分たちの仕事はサービス業である」といった認識をもっている人がほとんどいませんでした。
もちろん、笑わない、声をかけない人が悪いといった話をしているわけではありません。スタッフは上から言われたことをそのまま忠実にやっていただけ。自分の仕事はきちんとやっていたんですよね。ただ、決められた以外のことはやらなかった……いや、やってはいけなかったんですよ。
土肥: いまの時代、この日本で、そのようなことが平然と行われていたなんて、ちょっと信じられないですね。不思議な労働環境がはびこっていた中で、どのようにしてスタッフのマインドを変えていったのでしょうか?
関連記事
- 日経が撤退しても、『四季報』が存続しているワケ
会社情報誌『日経会社情報』が休刊し、今後は有料デジタルサービスに移行する。気になるのは最後の砦ともいえる『会社四季報』だ。ネットを使えば会社の決算情報は簡単に見ることができるのに、なぜ『四季報』は売れ続けているのか。 - なぜ地図で「浅草寺」を真ん中にしてはいけないのか
地図を作成している編集者に、2枚の地図を見せてもらった。1枚は浅草寺が真ん中に位置していて、もう1枚は浅草寺が北のほうにある。さて、実際に地図に掲載されているのは、どちらなのか。答えを聞いたところ、予想外の結果に!? - スポーツ界で“オレ様”が減っている、なるほどな理由
結果を出す人と、出せない人にどのような違いがあるのか。オリンピック4大会に出場し、4つのメダルを獲得した、水泳の松田丈志さんに話を聞いたところ「周囲から応援される人は結果を出しやすい」という。どういう意味か。話を聞いたところ……。 - 「YAMAHA」のプールが、学校でどんどん増えていったワケ
「ヤマハ発動機」といえば、多くの人が「バイクやヨットをつくっている会社でしょ」と想像するだろうが、実はプール事業も手掛けているのだ。しかも、学校用のプールはこれまで6000基以上も出荷していて、トップブランドとして君臨。なぜ同社のプールが増えていったのかというと……。 - なぜ時刻表に“謎ダイヤ”が存在するのか
鉄道の時刻表を調べる際、スマホで検索している人が多いだろうが、実は紙の時刻表をじっくり見ると、興味深い情報がたくさんある。例えば、実際に走っていない特急が走っていることも。どういうことか。『JTB時刻表』の大内編集長に、謎ダイヤの真相を聞いた。 - なぜ研修にチカラを入れている会社は、パッとしないのか
上司から「研修があるから受けてきてね」と言われたことがある人もいるはず。ビジネスシーンでよくある光景だが、グーグルで人材開発を担当してきたピョートルさんに言わせると、こうした会社は「イケていない可能性がある」という。なぜかというと……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.