Googleが広告ブロックを検討? その理由とは:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
米Googleが特定のネット広告をブロックする機能の導入を検討しているという。良質な広告を選別することで、長期的な利用者の信頼を獲得したい意向だが、同社の動きは広告に依存してきたコンテンツビジネスの流れを変えるきっかけにもなるかもしれない。
コンテンツビジネスに影響も?
話は少し変わるが、今回のGoogleの広告ブロックが実現すれば、広告に依存してきたニュースサイトなどのコンテンツビジネスの流れを変えるきっかけにもなるかもしれない。その理由は、このところフィンテックが急速に普及してきたことで、クレジットカードなどでは到底実現できなかったローコストの超少額課金モデルが成立する可能性が高まってきたからである。
大手ニュースサイトなど、コストのかかるコンテンツを提供する企業にとって、読者から直接、利用料金を徴収する有力手段は、今のところサブスクリプション・モデル(定額課金モデル)のみである。だが購読申し込みを受け付け、クレジットカードで課金させるまでのハードルは高く、一部の媒体を除いて、この定額課金モデルは普及していない。
しかし、フィンテックを活用した超少額課金システムをブラウザなどに埋め込むことができれば、利用者は課金についてそれほど意識することなく、見たいニュースを閲覧するたびに、ごくわずかの購読料を支払うモデルが成立する可能性がある。少額課金のプラットフォームとして何が台頭するのかは現段階では何ともいえないが、技術的な基盤はほぼ確立しつつあるといってよい。
PayPalやApple Pay、LINE Payのような決済サービスがローコストのコンテンツ課金事業に進出するというシナリオもあり得るだろう。LINEについては2017年1月からプレミア記事として有料ニュースの配信をスタートさせている。週刊文春のスクープ記事が読めるというもので、いわゆる「文春砲」を前面に打ち出したものだが、コンテンツ課金の新しいプラットフォームとして注目に値する。
少額課金のシステムがニュースなどのコンテンツビジネスと親和性が高いのかも現時点では何ともいえない。だが、従来型広告に依存した収益モデルがいつまでも続かないことも確かである。これから先の数年間はコンテンツビジネスにとっては正念場となるだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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