日本車はガラケーと同じ末路をたどるのか?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/4 ページ)
最近、世間ではこんなことがよく言われている。電気自動車の時代が到来することによって中国車が台頭し、日本車はガラケーと同じような末路をたどるというのだ。果たしてそうなのだろうか?
ラストワンマイルが絶対に必要な世界
もう1つ重要な視点がある。それは販売網だ。一般的に家電品は量販店や通販で買うものだが、クルマはメーカー系ディーラーで買うのが圧倒的主流である。クルマの場合、メーカーは売っておしまいというわけにはいかないし、ユーザーも買っておしまいでは困る。ディーラーはセカンドユーザー、サードユーザーに商品が渡ろうとも、そのライフタイムが終わるまで責任を持ってメインテナンスを行わなければならない。
並行輸入だからとか、メーカーは同じでもほかの店で買ったクルマだからという理由でメインテナンスを拒否すれば、公共の安全が脅かされる。だからメーカーと密接に結び付いたディーラー制度によって、個別には採算が合わなかろうと、社会的責務として修理や整備を行っていく必要があるのだ。
責任だけでなく頻度も違う。クルマには法定点検も車検もあり、商品ライフタイムで一度も修理、整備に入らないということは通常あり得ない。家電品はそもそもそのライフタイムにおいて、修理が必要になるケースがクルマより圧倒的に少ない。そういう頻度だから家電品は販売店と補修拠点を別に分け、運送会社のデリバリーを使って限定的な補修拠点で済ますこともできるだろうし、その不備がクルマと同レベルで命や安全にかかわることは通常ない。
つまりアフターサービス面で、責任から考えても頻度から考えても、クルマは販売・整備を水平分業することが難しい。ラストワンマイルのサポート体制を築かない限りクルマを売る責任が果たせない。
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