【詳報】富士フイルム、不適切会計の裏に何があったのか:富士ゼロックスを特別扱い(1/4 ページ)
富士フイルムホールディングス(HD)が、当初の予定よりも1カ月以上遅い6月12日に決算内容を開示した。その理由は、子会社の富士ゼロックスで海外子会社を巡る不適切会計が明らかになったためだ。事態の発覚が遅れた背景には、富士フイルムHDの富士ゼロックスに対する“特別扱い”があったという。
「富士ゼロックスに対する『過度なリスペクト』が不適切会計の発覚を遅らせた」――富士フイルムホールディングス(HD)の助野健児社長は、6月12日開いた2017年3月期の決算会見でこう釈明した。
本来、4月27日に決算を開示する予定だったが、ニュージーランドの関連会社「Fuji Xerox New Zealand(FXNZ)」の会計処理に問題が指摘されたため、有識者によって構成される第三者委員会が実態を調査するため、発表を延期していた。
FXNZは富士ゼロックスの子会社で、複合機の販売やリースなどを手掛けている。富士フイルムHDは当初、不適切会計の要因は「FXNZの15年度以前のリース取引において、月額料金の設定に不備があったこと」などと発表していた。
だが、第三者委が10〜15年度のリース契約を全て調査した結果、FXNZだけでなく、富士ゼロックスの豪子会社「Fuji Xerox Australia(FXAU)」でも同様の事態が起きていたことが発覚。両社の決算内容の修正が純損益に与える損失額は、想定額を155億円上回る375億円に上った。
第三者委の報告書によると、FXNZとFXAUは、複数年のリース契約の場合でも、複合機の価格分の売り上げを初年度に一括計上し、その後は月間印刷枚数に応じて月額使用料を徴収する「キャピタルリース」と呼ぶ契約形態を設けていた。
本来、この契約形態を適用できるのは、リース料総額の回収を確実視できる、一部の優良顧客に限られていた。だが両社はより多くの売り上げを計上するため、顧客の状況を問わず全ての案件をキャピタルリースとして処理した。
その結果、財務諸表上では売り上げが好調に見えるものの、実際は月間印刷枚数が想定の分量に達しない顧客企業が多数発生。当初の予定を下回る月額使用料しか回収できないケースが常態化していた。中には、契約時に月額使用料の下限値を設定していなかったため、債権を全く回収できない顧客企業も存在したという。
助野社長は、FXNZとFXAUが売上高を多く計上することにこだわった理由について「両社では、経営層などのボーナスが変動する『コミッション』と呼ぶ給与体系を設けていたため」と説明。「キャピタルリースを悪用して多くの給与を得ていた人物が存在する」と明かす。
その人物とは、04年〜15年3月にかけてFXNZで、15年4月〜16年5月にかけてFXAUで社長を務めたニール・ウィタカー氏だ。ウィタカー氏の任期中、2社は高い売上高を計上。同氏は優秀な人物として高評価を受け、多額の報酬を得ていたという。15年に同氏がFXNZからFXAUへ異動となった理由も、その手腕によってオーストラリアでリース事業を拡大することが期待されていたためだという。
では、親会社の富士ゼロックスは、ウィタカー氏の在任中、彼の不正をどの程度知っていたのだろうか。
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