“痛み”を取るデジタル化提案 GEの戦略:実践によるノウハウ提供(3/4 ページ)
米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、自社開発したプラットフォーム「Predix」を活用したソリューション提案に乗り出している。自社工場をデジタル化した経験を生かす。GEがデジタルトランスフォーメーションを推進できた理由とは……。
日本企業には“改善”の文化がある
―日本企業のデジタル化について、どう見ていますか。
日本は“改善”に対する意識と文化が根底にあるように感じます。整理整頓を日常生活でやっているし、電車に乗るときもちゃんと並んで乗車しています。そのような文化には、DXの考え方がフィットするのではないかと強く思っています。あとは、どうやって意識を高めて、理解していくか。それから、既存のシステムの契約期間などもあり、「ごめんなさい、2年契約なので今はできません」という返事をいただく企業もあります。ですから、一概に日本企業の現状はどうか、とコメントをするのは望ましくないと思います。
しかし、1つ言えるのは、改善したいという意思で取り組んで、気付きがあって、やり方を変える、ということに対して、日本の製造業はなじみがあると感じています。
―デジタル化に必要な視点は何だと思いますか。
まず、何のためにやっているかという明確な目的がないと、迷子になってしまう可能性があると思います。私たちが常に念頭に置いているのは、製品を作って提供するというプロセスの中で、何らかの理由でその価値が著しく低下している場合に、それを解決し、さらに良い成果を出すということです。
例えば、不良品が多いという課題に対して、工場のボイラーの温度が冬に0.5%下がると不良品が増えるというデータを提示できたとします。100円で売れる正規品が不良品になると20円でしか売れないとすると、ボイラーの温度を一定に保つ費用が10円だったら、70円は単純な利益ですよね。その70円のうち、いくらか私たちにください、という感じでソリューションを提案しています。効率化することで利益を生み出すという、明確な目的が必要です。
次に、トップリーダーからミドルマネジメントまでのコミットメントが必要です。「われわれは変わる必要があるんだ。なぜなら、こういうことです」といった共通認識を持たなくてはいけません。そして、最先端のテクノロジーを使うこと。リテラシーがあるチームの体制を作らないとたぶん難しいと思います。
―ある程度リテラシーが必要なんですね。GEに依頼して、丸投げすることはできないのですか。
丸投げはできません。DXはアウトソースできないのです。自分でやらなければいけないものであって、私たちが情報を共有したり、プロセスを支援したりすることはありますが、やっぱり自分でやらないと。GEが去ったときに、元に戻ってしまってはいけません。
関連記事
- デジタル変革に求められるアナログ力とは?
「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に成功している企業には、どのような特徴があるのだろうか。また、これからの時代でビジネスパーソンが活躍するためには、どのようなスキルが求められるのだろうか――。ガートナージャパンの有識者を取材した。 - デジタル変革は会議室ではできない
人手不足や高齢化を背景として、さまざまな分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)が議論されている。ビジネスのデジタル変革に必要な姿勢と人材とは……。キーワードは「現場」だ。 - “デジタル化”を意識しない人は出世できない
企業が生き残る上で、「デジタルトランスフォーメーション」の推進が喫緊の課題となっている。こうした背景から近年は、IT部門を経験することがCEOやCOOへ出世するための重要なポイントになってきているという――。 - 顧客の顔が見えない企業は「個人商店」に戻れ
商店街にある八百屋のような個人商店は、毎日来るような近所の住民が客なので、1人1人のことを深く理解しながら商売している。ところが、顧客が数百万人もいるような大企業になるとそうはいかない。どうすればいいのだろうか……? - 企業のデジタル変革、障壁は「既存ビジネス」
ゼネラル・エレクトリックが好例のように「デジタルトランスフォーメーション(DX)」によって新しいビジネスモデルを創造しようとする企業が増え始めている。ITmedia ビジネスオンラインでは、DXに関する有識者や専門家たちの意見をシリーズでお伝えしていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.