星野リゾート「リゾナーレ八ヶ岳」の成長が止まらない理由:総工費15億円でリニューアル(3/5 ページ)
2001年、ホテル・旅館の運営会社として星野リゾートが手掛けた第1号案件が、山梨県にある「リゾナーレ八ヶ岳」だ。運営開始から3年後に黒字化、現在の売上高は40億円を超える。その好業績の裏側に迫った。
潮目を変えた「ピーマン通り」
赤字で始まったリゾナーレ八ヶ岳だったが、既に改善の糸口は見えていた。旧施設はあまりにもムダが多かったのだ。
「昔のホテルの運営のやり方として、いろいろな部署で人員を抱えたがる傾向があります。それを最適化して、忙しい部署により多くの人的リソースを集中できるような機動力のあるチームに編成し直しました。それによって平時は各部署が最小限の人数で回せるようになったのです」(長屋氏)
ムダを省くと同時に、ベースとなる売り上げを確保するために、ブライダルや宿泊のプランを整備した。魅力ある商品を作るとともに、自社のチャネルを使ってなるべく安売りしないようにした。最初の3年間は筋肉質な経営を徹底したのである。
そして事業が黒字化したタイミングで、「大人のためのファミリーリゾート」の実現に向けて一気に攻めに転じる。
その1つが、ベーカリーや飲食店、ギフトショップなどが立ち並ぶ「ピーマン通り」の開設だ。それまで客室だった建物の1階部分をすべて店舗用テナントに変えて、地元の店などが入居できるようにした。また、夏には近隣の農家とマルシェを開いて野菜を販売するなど、季節ごとにさまざまなイベントを実施してにぎわいを作り出すようにした。「以前は顧客がいない時期になると閑散としていて、ゴーストタウンのようなエリアだったのですが、ピーマン通りができたことで、今では宿泊者だけでなく、外来客も足を運んでくれるようになりました」と長屋氏は効果を口にする。
そして、2006年に打ち出したのが「ワインリゾート構想」だ。星野リゾートは各施設でその地域の魅力を積極的に発信している。そうした中、リゾナーレ八ヶ岳では山梨および長野のワインを顧客にアピールしようとしたのである。言うまでもなく山梨と長野は日本を代表するワイン産地。全国に230あるワイナリーのうち半数以上がこの両県にあるのだ。
リゾナーレ八ヶ岳が目指すワインリゾートとは何か。それは、単にワインが飲めるだけではなく、地元のワイナリーを訪れて生産者と話をしたり、施設内のレストランですべての料理にワインをペアリングする特別コースメニューを作ったりと、トータルでワインを楽しめる滞在型リゾートなのだという。例えば、2012年にオープンした「八ヶ岳ワインハウス」では、山梨・長野エリアのワインを24種類常備。25ミリ(150円〜)から試飲できるので、より多くのワインを楽しみながら購入を検討できると好評だ。
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