星野リゾート「リゾナーレ八ヶ岳」の成長が止まらない理由:総工費15億円でリニューアル(4/5 ページ)
2001年、ホテル・旅館の運営会社として星野リゾートが手掛けた第1号案件が、山梨県にある「リゾナーレ八ヶ岳」だ。運営開始から3年後に黒字化、現在の売上高は40億円を超える。その好業績の裏側に迫った。
大規模リニューアルの狙い
こうした取り組みによって、「リゾナーレ八ヶ岳=ワインリゾート」という認知は着実に広がっていった。しかしながら、あくまでもワイン好きの顧客が中心であることは否めないという。例えば、レストラン「OTTO SETTE」で料理一皿一皿に異なるワインを提案していても、同レストランを利用するのは全体の2割程度。宿泊客の7割が夕食、朝食ともにビュッフェ&グリルレストラン「YYgrill」を利用するのだが、ワインを提供していなかった。
「今回のリニューアルは、ワイン好きだけでなく、より多くの来客者にワインリゾートを体感してもらうことを目指しました」と長屋氏が話すように、施設全体でワインリゾートのコンセプトを打ち出すようにした。総客室数172室のうち101室を改装し、ボルドーカラーのカーペットやワインを楽しむテーブルウェア、コルクをモチーフにした小物を導入したほか、八ヶ岳ワインハウスや提携ワイナリーで購入したワインを施設内のレストランに無料で持ち込めるサービスを始めた。
今後もリニューアルを含め、収益増に向けてさまざまな施策を検討していくという。
「年間稼働率は8割近いのですが、これ以上客室を増やすという計画はありません。それよりも、顧客に付加価値を提供できるような魅力的な企画を立てることで、滞在日数を伸ばしてもらったり、何度もリピートしてもらったりする戦略をとっていきます」(長屋氏)
特にリピーターが増えることによって、広告を出したり、安売りしたりする必要がなくなるため、結果的にマーケティングコストが下がる。そのために何度来ても飽きさせないコンテンツが不可欠なのだ。
リニューアルに関して、既に青写真を描いている。その1つが「イルマーレ」というプールだ。施設ができてから25年間、一度も手を入れていないため、再投資してファミリー層だけでなく、大人のグループ客にとっても魅力あるプールにしたいという。例えば、夜の時間帯を大人専用の空間にするなどだ。
もう1つがピーマン通りのテコ入れだ。現在のテナントはすべて星野リゾート以外の会社が運営しているが、今後は星野リゾートが運営するシンボリックな店を作り、独自の集客力でさらなるにぎわいを作りたいという。「宿泊客を増やさなくとも、外来客を増やせば活性化できます。その盛り上がりがこの場所を訪れる魅力につながるのです」と長屋氏は意気込む。
日本で数少ないワインリゾートとして進化を続けるリゾナーレ八ヶ岳。さらなる観光需要を喚起できるか、今後の動向を見守りたい。
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