アマゾンがアパレルに進出 何かが変わるかもしれない:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
アマゾンがアパレル分野での新サービス「プライムワードローブ」を発表した。このサービスによって近い将来、洋服の買い方が一変するかもしれない。
ショップにとっては脅威になる
アパレル業界では、一定金額を支払うと、自分に似合いそうな服が送られてきて、それをレンタルできる新サービスが拡大している。今のところ、過去のレンタル履歴などからスタイリストが洋服をチョイスするという人海戦術が中心だが、こうした作業はかなりの部分をAI化できる。
プライムワードローブは、都度、商品を購入するシステムだが、このサービスは月額固定料金制との親和性が高い。毎月、あるいは季節ごとに洋服のパッケージが送られてくるサービスがスタートするのは時間の問題だろう。
そうなってくると、洋服を購入する行為とレンタルする行為の垣根は限りなく低くなってくる。最終的には新品、何度か返品された新古品、中古品という3つの商品が1つの事業者の中で循環する一種のエコシステムが完成する。
利用者の購入形態が変わっても、洋服を作る機能は必要なので、メーカーという業態は維持されることになるが、ショップ(小売店)は大きな戦略転換を余儀なくされるかもしれない。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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