コンビニが「焼き鳥」強化、何が起きようとしているのか:“いま”が分かるビジネス塾(1/3 ページ)
ファミリーマートが焼き鳥の本格的な販売に乗り出した。ローソンも2016年から焼き鳥を強化しているが、今後、コンビニ各社は総菜類の品ぞろえをさらに拡充していく可能性が高い。一方、国内でもじわじわと「UberEATS」や「楽びん」といったデリバリーサービスの普及が進んでいる。近い将来、デリバリーを軸に、コンビニなどの小売店と外食産業の垣根が消滅する可能性も出てきている。
焼鳥強化の背景にあるのは市場の飽和
ファミリーマートは今月から、レジ横にある総菜売場を強化している。同社の主力総菜であるフライドチキン「ファミチキ」の販売を拡大するとともに、経営統合したサークルKサンクスで人気商品だった焼き鳥をラインアップに加える。さらに夏には天ぷらの販売も始める予定だという。
ローソンも焼き鳥のラインアップを強化している。2016年12月に、従来の焼き鳥と比較して20%増量した「でか焼鳥」の販売をスタート。人気商品である唐揚げと併せて、鶏肉関連商品の売上高を5割増にしたい意向だ。
コンビニ各社が総菜類に力を入れている背景には、コンビニ市場の飽和がある。これまでコンビニ各社は売上高を伸ばすため積極的な出店攻勢をかけてきたが、その戦略もそろそろ限界に来ている。最近では、競合のみならず、同じグループ内で顧客を奪い合う状況となっており、各社の1店舗当たりの売上高はほとんど伸びていない。
こうした状況において、業績を拡大するためには、他の業態から顧客を奪ってくるしか方法はない。その方策の1つが焼き鳥など総菜類の充実ということになる。焼き鳥や天ぷらといったメニューが充実してくると、スーパーなど総菜を扱う他の小売店の顧客を獲得できることに加え、場合によっては居酒屋など外食産業からも一部の顧客を奪える可能性が出てくる。
外食産業の中でも、実は同じような動きが顕著となっている。牛丼チェーンの吉野家が、アルコール類やおつまみなど、いわゆる「チョイ飲み」のメニューを拡充したのも、居酒屋など他の業態から顧客を獲得するためである。チョイ飲み分野は、コンビニ、ファストフード店、そして居酒屋の3業態が入り乱れた状況だ。
関連記事
- なぜセブンは海外のコンビニを買うのか
セブン-イレブンがこれまで聖域としてきたFC加盟店のロイヤリティ引き下げに踏み切った。同じタイミングで過去最大規模となる海外のコンビニのM&A(合併・買収)実施についても明らかにしている。飽和市場で苦しくなると言われながらも、何とか成長を維持してきたコンビニ業界だが、一連の決定は成長神話もいよいよ限界に達しつつあることを如実に表している。 - セブンの「ロイヤリティ引き下げ」が意味するもの
セブン−イレブンが、これまで「聖域」としてきたフランチャイズ(FC)加盟店のロイヤリティ引き下げを表明。コンビニにとって核心部分であるロイヤリティの見直しを実施しなければならないほど、セブンは追い込まれつつあるのかもしれない。 - 「無人コンビニ」の普及がもたらす経済的インパクト
米Amazon.comが3月にオープンする予定だった無人コンビニ「Amazon Go」のプロジェクトが遅延している。無人コンビニは技術的難易度が高く、トラブルが多発することは容易に想像できるが、本格的に普及した場合の影響は大きい。無人コンビニは社会や経済に対してどのような影響を与える可能性があるのか。 - 「Pepper」は介護業界の人手不足を解消するのか
「Pepper」が介護現場で効果を発揮し始めている――。ロボットの活用が思うように進まない介護業界だが、「Pepper」はどのようなシーンで役立っているのだろうか。 - AIビジネスの“カンブリア爆発”が始まる
2015〜2016年にかけて、AI(人工知能)は人間を超える「目」と人間並みの「耳」を持った――。目を持ったことでカンブリア紀に生物が爆発的に増えたように、AI搭載の製品やサービスもこれから爆発的に増えると考えられる。2017年以降、そのAIビジネスをけん引する企業とは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.