欧州で加速するEVシフト トヨタへの影響は?:“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)
スウェーデンの自動車メーカー、ボルボが内燃機関のみで走行する自動車の生産を段階的に廃止する計画を明らかにした。ほぼ同じタイミングで仏国のマクロン政権が2040年までに、内燃機関を搭載した自動車の販売を禁止する方針を表明している。欧州を震源地にEVへのシフトが一気に進む可能性が出てきた。
加速するEVシフト
この動きは、ボルボだけではない。5月に行われた仏国大統領選で政権交代を実現したばかりのマクロン政権が、40年までにガソリン車の販売を禁止する方針を打ち出した。仏国最大の自動車メーカーであるルノーは、政府が大株主であり、傘下の日産自動車(日産)はEVの開発に力を入れていることなどを考え合わせると、欧州においてEVシフトが加速する可能性が高まってきた。
仏国のガソリン車の廃止プランは、ユロ・エコロジー相が主導している。ユロ氏は、仏国の著名な環境運動家であり、シラク政権やオランド政権など、保守・リベラルを問わず、入閣を打診されてきた過去がある。ユロ氏の入閣はマクロン政権の目玉人事の1つと言われており、政権としてもこの政策にはかなり力を入れるはずだ。
マクロン氏は無所属で大統領になった極めて珍しい政治家であり、これまで確固たる政治基盤を持っていなかった。だが、大統領選後に行われた国民議会選挙では、マクロン氏が立ち上げた新党「共和国前進」が7割近い議席を獲得。社会党や共和党などの既存政党は事実上、瓦解した状態にある。
マクロン氏の政治手腕は未知数だが、取りあえず国民議会で圧倒的多数を確保した事実は重い。さらに言えば、マクロン氏は筋金入りのEU(欧州連合)主義者として知られており、仏国に対するEUの期待はかなり高まっている。
タイミングを同じくして、米国のトランプ政権が地球温暖化対策の枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明したことで、地球温暖化対策の主導権が仏国とドイツに移ることはほぼ確実な情勢となった。欧州におけるエコカーシフトを巡る環境は整ってきたと言ってよいだろう。
次世代エコカーの標準仕様を巡っては、EVや燃料電池車(FCV)など複数の技術が併存しており、どの仕様が主流となるのかはっきりしない状態が続いていた。しかしEVメーカーのテスラが大躍進するなど、社会の流れは確実にEVに傾きつつある。一連のエコカーシフトは、事実上、EVシフトと認識して間違いないだろう。
関連記事
- 電動化に向かう時代のエンジン技術
ここ最近、内燃機関への逆風は強まるばかりだ。フランスやドイツ、あるいは中国などで関連する法案が可決されるなど動きが活発である。それにメーカーも引きずられ、例えば、ボルボは2019年から内燃機関のみを搭載したクルマを徐々に縮小していくという。 - アマゾンがアパレルに進出 何かが変わるかもしれない
アマゾンがアパレル分野での新サービス「プライムワードローブ」を発表した。このサービスによって近い将来、洋服の買い方が一変するかもしれない。 - コンビニが「焼き鳥」強化、何が起きようとしているのか
ファミリーマートが焼き鳥の本格的な販売に乗り出した。ローソンも2016年から焼き鳥を強化しているが、今後、コンビニ各社は総菜類の品ぞろえをさらに拡充していく可能性が高い。一方、国内でもじわじわと「UberEATS」や「楽びん」といったデリバリーサービスの普及が進んでいる。近い将来、デリバリーを軸に、コンビニなどの小売店と外食産業の垣根が消滅する可能性も出てきている。 - セブンの「ロイヤリティ引き下げ」が意味するもの
セブン−イレブンが、これまで「聖域」としてきたフランチャイズ(FC)加盟店のロイヤリティ引き下げを表明。コンビニにとって核心部分であるロイヤリティの見直しを実施しなければならないほど、セブンは追い込まれつつあるのかもしれない。 - AIが普及しても営業職はなくならない?
近い将来、社会にAI(人工知能)が普及し、多くの仕事が機械に取って代わられるというのは、一定の共通認識となりつつある。だが具体的にどの仕事がAIに代替されやすいのかという部分については、人によって考え方が異なっているようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.