2015年7月27日以前の記事
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現金決済がなくなる日は近い“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

米VISAは、キャッシュレス決済に移行する飲食店や小売店などに対して1万ドルを支払うキャンペーンを開始した。こうした大胆な方針を打ち出しているのは、世界的にキャッシュレス化が進む可能性が高まっているからである。現金決済が消滅する未来はすぐ近くまできている。

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キャッシュレス社会はメリットだらけ

 Apple Payは2016年10月に国内でサービスを開始したばかりだが、Suicaとの連動性が高く、クレジットカードでの課金ができるので、場合によっては一気に市場が拡大する可能性がある。

 「ウォレット」と呼ばれるiPhoneのアプリにクレジットカードやSuicaを登録すればすぐにサービスを利用することができる。店舗ではSuica、QUICPayなど既存の決済手段の中から好きなものを選択し、スマホをかざせば決済が可能だ。

 店舗での現金のやりとりが減ると、経済的には多くのメリットが享受できる。現金の配送や管理にはかなりの手間とコストが発生しており、これが店舗の生産性を下げる要因となっていた。現金決済をやめることで、こうした負荷を大幅に減らすことができる。人手不足と残業が社会問題になっている日本では非常に重要なポイントとなるだろう。

 全ての決済が電子的に記録されるので、マネーロンダリングなど犯罪目的の利用も減らすことができる。現金が存在しなければ、盗難やスリの被害も大幅に減らせるだろう。また、電子決済に関連したビッグデータは宝の山だ。現金決済の時代には埋もれて見えなかった消費者の行動が、電子決済によって浮き彫りになる可能性もある。

 個人の生活という点でもメリットが大きい。ほとんどの買い物が電子決済で行われれば、どこで何にお金を使ったのか一目瞭然である。電子決済サービスを提供する企業が明細を作成してくれるので、わざわざ家計簿などをつけなくても、簡単にお金を管理できるようになる。お金の使い方を俯瞰(ふかん)して見ると、自分がいかにムダにお金を使っているのか愕然(がくぜん)とするはずだ。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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