バスクリン若手社員が立ち上げた「銭湯部」の効能:銭湯を盛り上げたい(4/4 ページ)
入浴剤の老舗メーカーのバスクリンで若手社員が立ち上げた部活動「銭湯部」。廃業によって減っている銭湯を「盛り上げたい!」という思いから始めた活動だが、社内の世代間交流促進にもつながっている。その取り組みについて、仕掛け人に聞いた。
チャレンジを共有する機会に
さまざまな場所を舞台にして活動に取り組んできた銭湯部だが、高橋さんにとって最も大きな成果は社内にある。それはベテラン社員に対する“リスペクト”の気持ちが強くなったことだ。
長年にわたり会社を支え、歴史をつくってきたベテラン社員が何を考え、何を実行してきたか。日ごろの業務だけでは深く理解することはできない。さまざまな世代の社員が一緒に湯船に漬かることをきっかけに、知恵やノウハウを伝承する機会も生み出している。
そこで話されるのは、現在の定番商品や社内独自の取り組みが生まれたころのエピソードだ。ベテラン社員にとっては知っていて当たり前であり、普段は特に口にすることはない“暗黙知”になっていた。
例えば、高橋さんが銭湯で役員に聞いたのが、ヒット商品の開発秘話。「バスクリン ゆずの香り」は、62回もの調香を経て完成に至ったという。また、炭酸入浴剤「きき湯」は、大分県の炭酸泉をモデルに、「温泉のもつ効果」を表現しようと開発が始まり、主力ブランドに成長した。
「ベテラン社員が20年前、今の自分たちと同世代だったころにチャレンジしたことを知ると、刺激になる。その挑戦があったからこそ今がある。自分たちももっとチャレンジしていこうという気持ちになった」(高橋さん)
銭湯部だけでその気持ちを共有するのはもったいないと考え、社内勉強会「バスクリン大学」を開催。年1回開催し、モノづくりやブランド構築などの知見を社内に広めた。若手社員は積み重ねられた工夫や努力を知り、ベテラン社員も若手社員の考えや関心を知る。コミュニケーションが社内の連携を深めている。「商品力の強さを実感する機会になり、営業や研究開発に対するモチベーション向上につながっている」という。
高橋さんは、「老舗企業が長く続いているのは、変わっていないように見えても、実は革新を積み重ねてきたから。『古い会社だから受け入れられない』と挑戦を諦めてしまうのではなく、老舗でこそ、新しいことを実現できると考えています」と話す。
会社の歴史から見ると、高橋さんの挑戦はまだ始まったばかり。「日本のお風呂文化を世界に広めたい」という目標を胸に、銭湯部の活動の幅を広げていく。
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