神戸製鋼問題で世界が問題視する「日本企業文化」:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
神戸製鋼のデータ改ざん問題が大変な騒動になっている。自動車や航空機などで同社製品が使われているので、その影響は拡大していきそうだが、海外メディアはこの問題をどのように報じているのか。まとめてみると……。
「メイド・イン・ジャパン」の信頼が揺らぐ
一方で米国のブルームバーグの分析は深い。日本の「Kaizen(改善)」という企業文化が世界でも本などになっていることを挙げて、「日本のハイクオリティーという名声に寄与した工程革新の多くが、世界中で受け入れられ、本物で目に見えるような恩恵を与えている。だが完璧主義は時に崇拝のようになり、日本の国家的誇りが、優れた製造業の根幹にある謙虚さを低下させるリスクをはらんでいる」と書く。
ドイツの放送局であるドイチェ・ヴェレも、神戸製鉄の疑惑は、日本企業の信頼を揺るがしている不正行為の数々に新たなケースが加わることになったとリポートし、「トップクオリティーの製造業という世界的な評価に傷をつけた」と指摘する。ロシア政府系のロシア・テレビは、「神戸製鋼はかなり残念な『クラブ』の仲間入りをした。そのクラブはスキャンダルや不始末に覆われた日本企業がメンバーである」と皮肉る。
インドのDNA紙は、「世界は日本企業からちょっと多くを期待すぎているのではないか……完璧な人間などいない」と書く。そして神戸製鋼には「金繕い」が求められるという。金繕いとは、壊れた傷を見た目に残したまま修復を行う方法だ。今回負った傷を忘れないように、前に進むしかないという。だがもちろん、再起不能になるほどのリコールや損害賠償が出る可能性もまだあるのだが……。
米国のニューヨーク・タイムズ紙はこう見る。「日本はテレビや携帯電話、コンピュータのようなテクノロジーで首位を明け渡してしまったが、評価の高い商品の内部の精密機器や特殊化学製品、センサーやカメラなどで使われている」とし、「日本は痛いところを突かれた。安い代替品を提供する中国やほかの国々に対するセールスポイントとして質の高い製造業という名声に頼っている。だがいくつかの大企業による一連の問題によってその名声が損なわれている」
そして同紙が最大の打撃だったという2017年のタカタ、さらに2016年に燃費不正問題を起こしたスズキと三菱自動車、最近の日産自動車のケースを取り上げている。
もちろん、大半の企業がこうした不正行為をしていないだろうし、そうだと信じたい。データの改ざんがあっても、いまだに中国やドイツでさえも提供できない高品質な製品を作っているのは事実である。だが、少なくとも、これまでの大手による不正で世界からの「メイド・イン・ジャパン」に対する信頼が揺らぐ中で、今回のスキャンダルが一気にその傷口を広げることになるだろう。一部の大手企業が犯したことかもしれないが、対外的には日本の製造業全体のイメージをかなり失墜させることは間違いない。
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