これから急増する英語教師を「警戒」すべきか:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
都立高校に勤める米国人の英語教師が、16歳の女子高生にわいせつ行為をしたとして逮捕された。このようなニュースが報じられると、「外国人は危ない」といった声が出てくるが、本当にそうなのか。大切なことは……。【訂正】
「情報共有」を徹底しなければいけない
そんなインターナショナルスクールで、よからぬ話が出ていると在日外国人から耳にし、取材に動いたのは2017年の夏だった。外国人教師による、校内での性的虐待の問題だった。
インターナショナルスクールやアメリカンスクールで教えていた教師らが生徒に性的虐待を行なっていたことが判明して2014年にニュースになったことはあるが、最近もまた同様の事件が、関東の有名インターナショナルスクールで発覚していたという。1990年代〜2000年代に学校に通った生徒たちが最近になってその事実を告発し、2017年6月に学校側が同窓生や父兄らにひっそりとその報告を行なったのである。
問題は、性的虐待をした教師が世に放たれたままだということだ。インターナショナルスクールで問題を起こした教師は学校をクビになっているが、その後その人物がどこに行ったのか分かっていない。学校はクビになったが刑事告発されたわけではないし、当時、強制送還のような措置にはなっていない。また、こうした情報をインターナショナルスクールや一般の学校などの間できちんと共有することはない。
この件の情報提供者の1人は筆者に、「地方や他の学校で何もなかったかのように問題教師が再就職している可能性があるんだよ」と嘆いていた。
そういう恐ろしい状況を回避するためにも、またアリソンのような犯罪者を学校に近づけないためにも、情報共有は徹底してやらなければならない。愛知県で名前を変えるなど過去の処分を隠して教師を続け、小学校低学年の男児へのわいせつ行為で捕まった教師のニュースが最近報じられていたが、そういうことまで察知できる体制づくりをしてほしいものだ。
激増しつつある外国人を対象に情報共有を行うことが、志をもって真面目に取り組んでいるJETなどの外国人たちのためでもある、ということを改めて確認すべきだろう。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
関連記事
- ボイコット危機の平昌五輪で韓国が恐れる本当の“敵”とは
2018年2月に韓国で開催される平昌五輪に不参加国が出る可能性が報じられた。深刻化する北朝鮮情勢が大きな懸念となっているが、五輪を巡る問題はそれだけではない。 - 核シェルターが売れているのに、なぜ業者は憂うつなのか
北朝鮮が6度目の核実験を実施した。自分の身を守るために「核シェルター」の販売数が伸びているそうだが、業者からは困惑の声も。どういうことかというと……。 - 北朝鮮が攻撃できない、米国も攻撃できない背景
北朝鮮が攻撃してくるかもしれない――。何度もミサイル実験を繰り返されると、多くの人がこのような不安を感じるかもしれない。では、米国政府はミサイル問題をどのようにとらえているのか。実は……。 - 実は怖い、インド便のトイレ
航空会社のトラブルが相次いでいる。男性が警察に引きずり出されたり、母親がベビーカーを奪われたり。いずれも米国の航空会社で起きたわけだが、客室乗務員によると「インド便で深刻な問題がある」という。どういうことかというと……。 - 金正男だけでない!? 殺人工作のリアル
金正日総書記の長男である金正男が、女性2人に襲われて暗殺される事件があった。この事件は大きく報じられているが、実は世界を見渡せば、国家が絡んでいるとされる秘密工作は少なくない。例えば……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.