宇宙旅行事業にサウジアラビアが10億ドル投資した理由:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
つい先日、Virgin Groupの宇宙事業会社に対して、サウジアラビアの政府系ファンドが10億ドル出資するという発表があった。いよいよ有人の初フライトが近づいてきたようだ。
宇宙エンタテイメント産業や有人高速輸送サービスも視野に
今回の出資に際して、Virgin Groupは「この投資が既存の有人宇宙旅行計画および小規模衛星打ち上げサービス、さらに将来的なサービス開発を加速させる」とコメントしている。また、将来的にサウジアラビアに宇宙エンタテイメント産業を構築する可能性もあるという。他方、ブランソン氏も「この投資が次世代の衛星打ち上げ技術の開発を可能にし、さらに拠点間の超音速輸送計画を加速させる」と語るなど、将来的にはさらなる野望を持っている。
勢いを増す同社であるが、それぞれの分野にライバルが存在する。サブオービタルまでの有人宇宙旅行事業ではジェフ・ベゾス氏率いる米Blue Originがライバルであり、同社も初フライトを2018年と発表している。他方、小型衛星打ち上げサービス事業では米Rocket Lab、米Vector Space Systems、日本ではキヤノン電子が中心となって立ち上がった新世代小型ロケット開発企画株式会社などが存在する。
地球上における高速輸送システムに関しては、前回記事で書いたように、SpaceXのイーロン・マスク氏も壮大なビジョンを掲げている。有力企業間の競争が産業を前進させて、ついに見えてきた有人宇宙旅行事業。18年に行われるという初フライトを期待して待ちたい。
著者プロフィール
石田 真康(MASAYASU ISHIDA)
A.T. カーニー株式会社 プリンシパル
ハイテク・IT業界、自動車業界などを中心に、15年のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙政策委員会 宇宙民生利用部会 委員。日本初の民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE共同創業者 兼 代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。著書に「宇宙ビジネス入門 Newspace革命の全貌」(日経BP社)。
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